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「やらされ感」じゃなく「やってる感」で動く職場にする方法を教えよう――東急スポーツオアシス 代表取締役社長 平塚秀昭氏長谷川秀樹のIT酒場放浪記(4/4 ページ)

「Apple Watchを着けて泳げるプール」を日本で初めて銘打ったフィットネスクラブ「東急スポーツオアシス」を率いる東急スポーツオアシの表取締役社長 平塚秀昭氏が語る、従業員が楽しく働く職場づくりの極意や、組織を変えるチャレンジマインドとは?

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大企業より中小企業の社長の方が楽しい

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長谷川: オアシスでは、日本で初めて「Apple Watchを着けて泳いでもいいですよ」としたんですよね。専用のシリコンのカバーを用意して、泳いでる人に当たっても大丈夫なような対策をしながら。僕はそれを記事で見たときに、やっぱり平塚さんのApple愛って相当やな、と(笑)

平塚: Apple愛というか、やっぱり「日本初」ってやりたいじゃないですか。世界初はなかなか難しいからね。

長谷川: 日本人って、ちょっとしたリスクを取るのを嫌がる人が多いですけど、「日本初」で喜ぶというこのマインドがいいですよね。前例がないからやる、と口ではみんな言うと思いますけど、ほんまにやる社長ってやっぱり少ないと思います。

平塚: みんな、考えすぎなんですよね。僕は考える前に動いてるから。それがenjoybなんですよ、考えて考えて、やっぱり危険があるからやめようかって、それおもろないやん。だったらやってみて、極端な話、何か事故があったら止めます、それでええと思う。しょせんそんな大きな事故にならへんわけで、せいぜいクレームでペケが付くくらい、全然OKでしょ。

長谷川: ベンチャーの人っぽい発想ですね。大会社、大グループの人は、なかなか思っててもチャレンジしない人の方が多いですよね。

平塚: 俺は、大手の会社のトップとか執行役員とかにはなれないね。もっと規模が小さくて、パンパンパンっていく組織の方が向いてると、最近常々思うんですよ。やっぱり東急不動産の時に周りを見ていると、「ここがダメ、あれがダメ」って否定する言葉が多かった。それって面白くないんですね。これやってみたらおもろいちゃうんか、やろうやって言ってできるのは、オアシスぐらいがちょうどいい。

長谷川: 僕もそうですね。

平塚: 僕、いつもおもろいか、おもろないかで考えるけども、大手の社長っておもろいんかどうかで言ったら、分かれへんよ。世間からいっぱい注目されてて、業績上げなあかん、だからいろんな事故起きてるよね、粉飾とか。あれって、世間の期待に応えるためという、自分の意思とは違うところでやってるので、絶対面白くないよね。給料は違うかもしれないけど、そんなに注目を浴びない小規模のところで、好き勝手に“切った張った”やった方が絶対面白い。

長谷川: 今のはすごい真理ですね。平塚さんは大グループの中と、今の立場と、両方経験されてそれを実感されたんだと思いますけども。

 僕が大好きな情シス部長で、エレベーターのフジテックという会社の友岡さんっていう人がいるんですけど、彼は年商2000億以上の会社にいったらあかん。何もおもろない、と言っています。友岡さんは、パナソニック、ファーストリテイリングという大会社を経て、今フジテックなんですけどね。2000億以上の会社のCIOになったところで、なんにも動かれへん。なんかちょびっと言ったところで、全然下に響かないし、すぐ動かへんから、面白くないと。

平塚: うん、分かるわ。

社長は役割。立場が変わっても自分は変わらない

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長谷川: あと、平塚さんがすごいのは、中小企業といっても300人規模の会社で、アルバイトさんにそこまで近づく社長ってなかなかいないですよ。

平塚: 俺は、「社長ってみんな偉いと思うてるやろ? ちゃう。役割やねん」って言ってます。いろんな部署があって、それをどう動かすかということを指示する役割というだけで、偉いからなってるんちゃう、とみんなに言うんです。だから、役職で呼ばないで“さん付け”。

長谷川: ここはいろんな勘違いの部分で、社長というのはエリート街道をやってきたすごい人、みたいなイメージで見られますよね。平塚さんは、そんなの関係ない、と。普通の人間同士としてしゃべって何が悪いんや、ということですよね。

 でも、社長の中には、自分はできる人間を演じないといけないとか、できる人間じゃないと下はついて来ないっていうような、プレッシャーとか思い込みがある人もけっこう多いと思うんですけどね。

平塚: 立場が変わったら、自分もそれに合わせて変わらなあかんっていう人もいるでしょ。でも、僕は逆に変わりたくないし、変わろうと思ってないし、そのまんまでええと思ってるので。しょせん平塚って、こんな人間なので、こんな人間を社長にして、間違ったらいつでもやめたらええやんけって、思ってるぐらいなんですよね、自分の立場が変わったことによって、自分のキャラを変えるつもりは全くないし、社長やからって偉く振る舞わなあかんとも思ってない。

長谷川: なるほど、それが“平塚スタイル”だと。

平塚: そう、平塚スタイル。

長谷川: なるほどね。僕はこう見えて、場面によって変わるというか、周りの期待に合わせちゃうようなところはあるんですよね。

平塚: そうなんや。見えへんね。

長谷川: 見えへんかもしれないですけど、いろいろ考えてるんですよ(笑)。そういう意味でも、平塚さんは面白いな、と。

 いつも仲良くしていただいているんですけど、今日は普段より真面目な話をたくさんさせていただいて、勉強になりました。これからもよろしくお願いします!

平塚: こんな話で良かったんかな? どうも、ありがとうございました。

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ハンズラボ CEO 長谷川秀樹氏プロフィール

1994年、アクセンチュア株式会社に入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、株式会社東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、Twitter、Facebook、コレカモネットなどソーシャルメディアを推進。その後、オムニチャネル推進の責任者となり、東急ハンズアプリでは、次世代のお買い物体験への変革を推進している。2011年、同社、執行役員に昇進。2013年、ハンズラボを立ち上げ、代表取締役社長に就任。(東急ハンズの執行役員と兼任AWSの企業向けユーザー会(E-JAWS)のコミッティーメンバーでもある。


取材・執筆:やつづかえり

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