1万人の「働き方改革」に47億円を投資――熊本市が本気で進めるシステム更改プロジェクト:震災でクラウドのメリット実感(1/2 ページ)
2016年に発生した地震からの復興が続く熊本市。同市は日本マイクロソフトと連携し、働き方改革を推進していくことを発表した。その裏には「震災時にクラウドの利便性を実感した」という、市長の強い思いがあるようだ。
2016年4月に起きた熊本地震で甚大な被害を受けた熊本市。その熊本市が4月3日、市の職員や教職員約1万2500人に向け、働き方改革を推進する大規模プロジェクトを進めると発表した。5年間で、総額約47億円の投資を行うという。
本プロジェクトでは、庁内の無線LANを整備するほか、「Windows 10」「Office 365」などをまとめたクラウドベースのソリューション「Microsoft 365」を導入する。市民からの問い合わせ対応に「Skype for Business」や、多言語対応のチャットbotを活用する仕組みも検討するほか、災害などの非常時における情報基盤の整備を進め、官民連携の強化を図るとしている。
本プロジェクトは、日本マイクロソフトにとって「地方自治体では最大規模の取り組み」(同社)だというが、熊本市がこのような施策を進める裏には、「震災時にクラウドの利便性とメリットを身を持って体感した」という、大西一史市長の強い思いがある。
11万人の避難者に支援物資をどう届けるか?
熊本地震では、2回にわたって震度7の地震が起きた翌日、避難者が最大で11万人にまで膨らんだ。被災した熊本市が支援物資を届けるのは難しいことから、今回の震災では、市からの具体的な要請を待たずに、政府が物資を緊急搬送した(プッシュ型支援)。
しかし、避難所の数は250を超えており、物資拠点の職員や市役所との連携、さらに物流環境の整備や受け入れ態勢を含めた運用の準備が整っていなかったことから、「市内に届いた物資をいつ、どのように振り分けるか」という各避難所との連絡が錯綜してしまったのだ。
そのような状況下で、日本マイクロソフトは災害支援として、熊本市にOffice 365とSurface端末を無償で提供。東日本大震災時の復興ノウハウを持ったNPO団体も交え、避難所運営の担当者と物資拠点の職員、そして市役所とで情報共有を行うクラウドシステム「くまもとRねっと」を立ち上げた。モバイル端末も貸与されたほか、各通信キャリアが移動基地局車を派遣。こうした支援によって、情報共有が円滑に進むようになったという。このシステムと経験を生かし、今後は「地域情報ネットワーク」を展開する予定だ。
「2018年は、熊本市が計画する復興の折り返し地点になる。市民サービスの満足度を高めるために、意識改革を含め、職員の働き方を変えなければいけない。業務の効率化を進め、さらに被災者支援に集中できるようにしていきたい」と大西市長は力を込める。
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