風神雷神図屏風を「HoloLens」で鑑賞――まるでアトラクションのような体験に驚いた:MR×文化財の可能性(1/3 ページ)
HoloLensを使って、日本の国宝である「風神雷神図屏風」の新たな鑑賞体験を――。そんなイベントが京都で開催されている。記者も実際に体験してみたが、従来の鑑賞とは全く異なる、1つの“アトラクション”のような感覚を味わった。
日本の国宝である「風神雷神図屏風」。江戸時代初期の画家、俵屋宗達が描いた作品で、工芸品で初めて国宝に認定されている。美術に詳しくなくとも知っている人は多いだろう。
しかし、そんな国宝となった文化財でも、絵画が生まれた背景や「何がすごいのか」といった点を知らない人は少なくない。風神雷神図屏風に限らず、こうした文化財や芸術作品をしっかりと理解して鑑賞するには、ある程度の知識が必要で、文章や音声ガイドによる補足説明だけでは足りないこともある。
美術鑑賞にITの力で新たな情報を付加できないか――。今、この300年以上前に描かれた絵画が「MR(Mixed Reality=複合現実)」の力を借りて、新たな鑑賞の形を生み出そうとしている。
風神雷神図屏風×HoloLensで生まれる新しい鑑賞体験
hakuhodo-VRARと建仁寺は2月21日に「MRミュージアム in 京都」を発表した。これはマイクロソフトのヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」を使い、約10分間をかけて風神雷神図屏風の解説コンテンツを体験できるというイベントだ。建仁寺が所蔵する風神雷神図屏風は現在、京都国立博物館に寄託されているが、本イベントでは建仁寺および京都国立博物館にて、そのレプリカを使ったMRコンテンツを約300人が体験できる。3月2日まで一般公開を行っている。
このイベントは、2017年7月に発表された「京都Mixed Realityプロジェクト」によるもので、歴史的な文化財とMRを組み合わせたケースは「世界で初めて」(日本マイクロソフト)とのこと。文化財の新たな鑑賞スタイルや教育、観光モデルの実現を目指すという。
MRコンテンツの体験は「風神雷神図屏風」(レプリカ)が展示された5メートル四方程度の室内で2人1組で行う。室内を動き回りながら鑑賞を行う仕組みで、HoloLensを装着して作品に向き合うと、3Dグラフィックで全身を再現した、建仁寺僧侶の浅野俊道氏による解説が始まる。
作品から3Dグラフィックの風神と雷神が飛び出し、体験室の空間全体で嵐や雷を起こす様子が再現されたり、作品の左右に、尾形光琳が描いた風神雷神図屏風(東京国立博物館所蔵)と酒井抱一が描いた風神雷神図屏風(出光美術館所蔵)が映し出され、3つの絵を比較したりすることができる。
この他にも、空中でエアタップをすると、指先から蝶が舞うインタラクティブな演出も用意。筆者も体験してみたところ、視野角がやや狭いのが気になる瞬間があったものの、3Dグラフィックやスピーカー、照明をふんだんに使い、体を動かしながら作品を理解するという体験は、まるでテーマパークのアトラクションのようで、感動する部分も多かった。
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