クリーニング屋の副社長は元DJ!? 独学で作ったAIで「無人店舗」を目指す:ディープラーニングで洗濯物の種類を識別(3/3 ページ)
人口減少や家庭用洗濯機の高性能化に伴い、市場規模が縮小する傾向にあるクリーニング業界。スタッフを確保するのも困難になる中、機械学習による画像解析を使った“省人化”に挑戦するクリーニング店が福岡県にあるという。
機械学習の活用で直面した「4つのカベ」
田原さんが直面したカベは、「課題発見」「データ収集」「機械学習」「実証実験」という各フェーズにあったという。
まずは「やってみた」のカベ。マニュアルを読んで機械学習の方法を学んでも、課題設定ができていなければ、自社のユースケースに当てはめて考えることができない。2つ目は「データ収集」のカベだ。田原さんも相当苦労したポイントだが、事前にデータセットがない場合、データの収集や分類のコストがかさんでしまう。
データが集まっても、実際に機械学習で高い精度が出るかは別の話だ。そこから精度を高めるためにさらに勉強することになるが、その内容の難解さが大きなカベになる。田原さん自身も、「エラーの連続で心が折れかけたことがある」という。
そして最後は、実証実験後に訪れる「実用化のカベ」だ。いかに精度が高いシステムができても、それが業務にどれだけのインパクトがあるか、そして費用対効果があるのかは、やってみなければ分からない。この点については、田原さんがこれから向き合わなければならない課題だ。実際の業務フローにどう取り入れるのかがカギになる。
2020年までに「無人店舗」をオープンしたい
さまざまな取り組みに意欲的に挑戦している田原さんだが、とにかくお金をかけないことを重視してきた。「Cloud MLで3000円使うのにもビビっています」という。そして現時点では、特にROIについては考えていないそうだ。
「開発にかけた労力がどれだけ実益に結び付いたか、実はムダなんじゃないかと考え始めると、何もできなくなる。大きな目標をぶち上げてから、どこまでそれに近づけるかを考えるのが自分のスタイル。どれだけもうかるというよりも、未来を作っている感覚が好きなんです」(田原さん)
実証実験の後は、2018年の夏ごろに一般用エンジンへと展開、プラットフォーム化を経て、「2019年から2020年の間に、受付スタッフがいない“無人店舗”をオープンしたい」と田原さんは意気込む。「必要は発明の母(Necessity is the mother of invention)」という言葉があるが、田原さんの取り組みは、たとえ技術はなくとも、課題への強い意識があれば、イノベーションを生み出せるという可能性を感じさせてくれる。
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