いいことばかりではない? MSのテレワーク体験プログラムから見えてきた課題と解決策:Microsoft Focus(2/3 ページ)
日本マイクロソフトが推進する「ウーマン テレワーク 体験プログラム」、その成果はいかに。子育てとの両立を目指すプログラム参加や、テレワーク人材の確保に期待を寄せるプログラムパートナー企業の生の声を紹介する。また、見えてきた課題とは?
子育てと両立、テレワークという働き方にビジネスの広がりも
ウーマン テレワーク 体験プログラムに参加し、ダンクソフトにインターン入社した入谷真紀氏は、経営コンサルタント会社を退職後、約10年間にわたり、子育てをしてきたという。
「退職後は育児に専念していたが、子どもに手がかからなくなったら仕事をしたいと思っていた。しかし、流山市では自分のスキルを生かした仕事ができず、都内まで通うことが前提だった」と入谷氏。「だが、子どもが夢を持ち始め、それをサポートするには、都内まで往復2時間をかけて通勤するのは難しく、働きたいという気持ちを諦めなくてはならないと考えていた」
同プログラムへの参加を打診された入谷氏は、「テレワークという言葉にはなじみがなかったが、テレワークを活用すれば子供の夢を支援でき、働くこともできるのではないかという希望が持てた」と、参加のきっかけを振り返る。
「受講前は、テレワークでどんな仕事ができるのか、どんな貢献ができるかが分からなかった。勝手に事務作業に近いものではないかと考えていた。だが、受講をしてみてテレワークで使えるツールの存在を知り、会社と簡単にデータを共有でき、コミュニケーションも密に取れることが分かり、ビジネスの広がりを感じた。もっと早く気が付けばよかった」と笑う。
在宅でテレワークに取り組んだ結果、仕事を効率的に行うという意識が生まれるとともに、家事も効率的に行う癖がつき、生活全体にメリハリがつくというメリットも生まれたという。
テレワーク推進で、全国を対象に優秀な人材を確保
同プログラムのパートナー企業で、テレワーカーを雇い入れる側であるダンクソフト社長の星野晃一朗氏は、「Skypeで採用面接を行ったり、テレワークだけで仕事をしてもらう例もあり、半年間勤務している社員の中には、Skypeで話をしたことがあっても、直接会ったことがない社員もいる」と話す。
同社では、テレワークを積極的に活用しており、「優秀な人材を採用する上で、全国を対象にできるのがテレワーク。都内だけでは、優秀な人材を確保するのが難しいが、テレワークを活用することで、地方の優秀な人材が獲得できる」と、企業側のメリットを示してみせる。
星野氏がテレワークを積極的に活用する背景には、自らがテレワークを実践し、その効果を実感してきたことがあげられる。
「社長に就任してからすぐに、清涼飲料水メーカーの自動倉庫のトラブルを解決するために半年間にわたって滋賀県に常駐することになった。当時は、パソコン通信の時代だったが、それを活用して遠隔で経営判断をしていた」という。また、「サッカーのワールドカップの観戦で、数週間海外にいたときにも、インターネットを活用して経営判断をしていた」というように、自らがテレワークを活用し、そのメリットを熟知しているのだ。
同社では、就業規則を社員主導で変えており、今では、いつでも、誰でも、在宅勤務ができるようにしている。社員はその制度を利用して、在宅勤務をしたり、海外旅行や新婚旅行中に仕事をしたり、情報を共有したりといったことができるようになったという。
「日本の企業の経営者の多くは、テレワークを理解しようとしていないか、あるいはテレワークの実態を見たことがないというケースが多い。その場所にいなくては駄目だというのではなく、テレワークを活用することで、優秀な人材を獲得したり、生産性の高い仕事の仕方をしたりといったメリットがあることを知るべきだ。社員のメリットは知られているが、経営者のメリットが知られていない。これをもっと知ってもらう必要がある」と指摘する。
優秀な人材を確保するという以外にも、オフィススペースや交通費、光熱費の削減が可能になるといった経営側のメリットをあげる。
「社員と経営者にとって、お互いに何がメリットなのかということを認識することが、テレワークの成功につながる」と星野氏は断言する。
そして、高齢者が海外にいる孫と会話をするのに「Skype」を使っている例を引き合いに出しながら、「高齢者も必要があれば、ITを積極的に活用する。経営者も同じ」と笑う。
一部では、現在テレワークを実践している先進企業はIT企業に集中しているという指摘もあるが、これに対して、星野氏は反論を述べた。
「いまオフィスで行われている仕事は、ほぼテレワークに置き換えることができる。ある企業では、オフィスから1カ月間外出しない仕事をしている人は、会社に来なくても仕事ができるとしてテレワークを採用。その仕組みを作って、海外の人材を雇用するといった変革にまでつなげている例がある」(星野氏)
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