業務は「サービスの標準機能に合わせて」シンプルに クラウドで変わる業務改革の常識:Weekly Memo(2/2 ページ)
その固有業務は本当に必要なのか――。クラウドサービスの普及で、これまでの常識が変わりつつあるようだ。この問題を考える格好の発表会見が先週あったので、今回はこの話題を取り上げたい。
クラウドサービスの標準機能に業務を合わせて改革を推進
今回の新サービスの発表会見には、以前からSAP SuccessFactorsのユーザーで、新たなサービス機能の導入にもいち早く取り組んでいる住友商事の山田裕志 人事厚生部兼グローバル人材マネジメント部 課長代理も登壇し、同社がSAP SuccessFactorsを選んだ理由について、次の3つを挙げた。
右から、SAPジャパンの稲垣利明バイスプレジデント 人事・人財ソリューション事業本部 本部長、同社の南和気 人事・人財ソリューションアドバイザリー本部 本部長、住友商事の山田裕志 人事厚生部兼グローバル人材マネジメント部 課長代理
1つ目は「人事業務のフルクラウド化」。全ての人事領域をカバーしたフルクラウドベースのトータルソリューションであることだ。2つ目は「同社要件とのマッチング」。同社の業務との高い適合性、システムの柔軟性・拡張性・保守性、高いユーザビリティ、強固なセキュリティ、グローバル展開へのサポートを評価した。3つ目は「進化するプラットフォーム」。人事を取り巻く環境変化への迅速な対応や、AIによる業務自動化などの最先端「HR Tech」実現を支援するプラットフォームであることだ。
山田氏はそのうえで、「次世代人事として新たな価値を創造していくためには、HR Techへの取り組みが不可欠。そのプラットフォームにおいては、業務改革の実践や安定的な保守・運用、最適なシステムコスト、AIなどの最新技術の活用が求められる。当社としてはそのプラットフォームとして、SAP SuccessFactorsが最適だと確信している」と信頼の高さを示してみせた。
ただ、人事給与業務は企業ごとにそれぞれ固有の業務が存在するケースが多く、システムとしてそれらの固有業務に対応する「カスタマイズ」が発生するのが、パッケージにおいては当たり前になってしまっていた。その同じ轍を踏むまいと、今回のケースで言えば、SAP SuccessFactorsが提供する標準機能に業務を合わせることが、つまりは「クラウドサービスで業務改革を推進する」ということになる。
この点について、会見の質疑応答で、ベンダーとユーザーの立場からそれぞれの取り組みを聞いてみたところ、まずSAPジャパンの南和気 人事・人財ソリューションアドバイザリー本部 本部長が次のように答えた。
「SAP SuccessFactorsは、豊富な設定の仕方をはじめとして、標準機能がこれまでの実績で相当充実してきており、カスタマイズはほとんど必要ないと考えている。ただ、固有業務というよりも、例えば健康管理のようにこれから必要となってくる業務をいち早く取り込めるように、クラウド上で素早く開発できる環境も用意している」
そして、住友商事の山田氏は、「当社のスタンスは明快で、基本的にSAP SuccessFactorsの標準機能に業務を合わせていく形で業務改革を進めている。その意味ではすでに9割以上の業務を合わせた。残りの1割弱についても本当に合わせることができないのか、その固有業務に当社としての明確な価値があるのか、を徹底的に議論して、最終的にどうするかを判断している」と答えた。
山田氏が語った取り組みそのものが、「クラウドサービス導入によって業務改革を推進する」ということだと筆者は考える。もう1つ、印象に残ったのは、人事部門のマネージャーが見事に経営視点で語っていたことである。住友商事の人事部門の素晴らしさを垣間見た気がした。
山田氏が言うように、「その固有業務は本当に必要か」を、ぜひ皆さんの会社でもクラウドサービスを利用して改めて議論してみていただきたい。
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