“かみ合わない”議論を整理する「問題解決の5階層」:榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』(2/2 ページ)
この会議、あれこれ意見は出るものの、なんだか話が平行線で進まない、どこか“かみ合っていない”気がする……。そんな議論を整理してスムーズに進めるための会議のコツとは。
議論の階層を意識するとズレに気付きやすくなる
会議では「今、どの階層について話しているのか」を見失うケースがとても多い。それを防ぐには、この議論の問題を解決する5階層を意識することが重要だ。
5階層のうち、どこの議論をしているのかをよく観察してみると、Aさんは「困り事=課題(第2階層)」の話をしているのに、Bさんは「施策(第4階層)」の話をしている、ということに気付けるようになる。これができるとずいぶん違う。
問題解決の5階層は下から合わせる
議論の階層がズレていることが分かったら、当然、話している階層を合わせればよい。ここでのポイントは、下の階層から合わせていくことだ。
下の階層の認識が合っていないと、それより上の階層の認識は合わない。「事象=起こっていること(第1階層)」の理解がズレていたら、「課題=困り事(第2階層)」の理解が合うわけがない。
逆に言えば、この階層のズレが分かってくれば、かみ合わせの悪さを軌道修正できる。
- 今、どの階層について話しているのか?
- 参加者の間で話の階層がズレていないか?
- 話がかみ合わないのなら、下の階層の議論を先にやるべきではないか?
こんな視点で冷静に議論を観察できるようになる。ここで適切な投げかけをすれば、かみ合わせはよくなる。その実例として、次に、あるプロジェクトでの会話例を挙げる。
実例: かみ合わない議論を軌道修正するコツ
あるプロジェクトで「ペーパーレスの推進」という施策が打ち出された。しかし、その是非は賛否両論だった。
- ペーパーレスは効果があるという人
- ペーパーレスにしても意味がないという人
- ペーパーレスは手段であって目的ではないという人
- ペーパーレス以外にも有効な施策があり、ペーパーレスありきの議論は間違っているという人
- ペーパーレスで逆に工数が増えるという人
こうなると、どこからどう議論すれば、みんなの思いがまとまるのか、見当がつかない……。こんなときこそ、問題解決の5階層の出番だ。5階層を基に、どこに不満があるのかを確認していく。
例えば、「ペーパーレスありきの議論が気に入らない」と言っている人は、第4階層の「施策」がまだ出尽くしておらず、「ペーパーレス以外にも施策があり得るのではないか」と主張しているのだ。だから、課題や原因に立ち戻り、あらためて施策のアイデアを洗い直すところから仕切り直すと、ズレが解消できるかもしれない。
「工数が増える」と言っている人は、第5階層の「効果」に疑問を持っている。この場合は、得られる効果を丁寧に議論していく必要があるだろう。
また、「他に施策があるのではないか?」と言っている人と、「ペーパーレスで逆に工数が増えるのではないか?」と言っている人は、違う階層を気にしていることが分かる。これを一緒に議論しても、解消できない。1つずつ、階層を分けて議論していくのがよいだろう。
このように、議論には構造があるということ、問題解決の場合は5層構造になっているということを理解できているだけで、ずいぶんと議論のかみ合わせはよくなるはずだ。
著者プロフィール:榊巻亮
コンサルティング会社、ケンブリッジのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。
関連記事
- 連載:「榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』」記事一覧
- “ダメ会議”を変える7つのコツ
会議に集まったはいいが、参加者が内職や居眠りをしていないだろうか。したり……。そんなダメ会議から脱却するために押さえるべき「4つのフェーズ」と「7つの基本動作」を紹介する。 - “意見が出ない会議”を変えるテクニック
職場の意見調整では、「なんとなく一致した」というようなふわっとしたコンセンサスではなく、「相違点を検討した上で合意する」という確かなコンセンサスを導き出すことが重要。そのために必要となる、“人から意見を引き出す秘訣”を紹介します。 - 請負型マインドからの「脱出」――DMM.comラボの情シスがスクラム開発に挑戦した理由
DMM.comグループの1社として、主にシステム企画や開発・運用を手掛けているDMM.comラボ。同社情報システム部では、スクラム開発などの新たな方法論を採用しながらさまざまなシステムの内製に取り組み、これまでの「請負型」情シスからの脱皮を図っている。 - Phone Appliの新オフィスが“キャンプ場”になったわけ
会社が成長し、スタッフが増えて行くに従ってコミュニケーションの壁ができ、離職率が上がってしまった――。コミュニケーションサービスを提供する会社が直面したこんな危機に、社長はどう立ち向かったのか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.