データサイエンティスト不足に悩んだ「LIFULL」 突破のカギは、機械学習の自動化(4/4 ページ)
データは増え続けているのに、それを分析する人手が足りない――。そんな企業は少なくないだろう。住宅情報サイトを運営するLIFULLも、データ分析チームに依頼が殺到し、困っていた。彼らはどのようにしてこの苦境を乗り越えたのだろうか。
実際、LIFULLではLIFULL HOME'Sのクライアントである不動産会社向けの支援サービスを提供している。「この物件はいい」と熟練したスタッフが経験や勘で提案してきたことを、AIで数値化することで、効果が確証できるものとして提案しやすくなるのだ。
例えば、不動産会社がオーナーから「今、空室が続いている物件をどうすべきか」と相談されたときに、DataRobotを使ったシミュレーションがあれば、「こういう条件の物件だと、問い合わせの予想確率が15%以上高くなるので、〇〇に今投資すべきです」というようなアドバイスができる。
「データサイエンティスト」が本当にやるべきこと
もちろん、解決すべき課題を機械学習で扱いやすい計算に置き換え、当てはめるという部分は人が行う必要がある。その点は、他の機械学習のツールやプラットフォームもDataRobotも変わらない。だが、モデル作成やシミュレーションといった面倒な部分がDataRobotで自動化される分、「問いの設定」に時間が割けるようになるのだ。
「課題の発見などはデータサイエンティストの仕事です。何を学習させたいのか、何のデータによって何の項目を予測させたいのか。データを加工したり、抽出したりするのは自分たちで行っています」(椎橋さん)
LIFULLでは、AI推進ユニットのメンバーに限らず、事業部のメンバーにもDataRobotを広めようとしている。勉強会を開いたり、使いたいとアプローチしてくる“野良データサイエンティスト”的な社員に、アカウントを一部開放したりしているという。
「非エンジニアの人間にDataRobotを使ってもらおうとする場合、DataRobotそのものというより、今の課題に機械学習を当てはめるとどうなるかをイメージするのが“カベ”になりますね。最初は慣れが必要だと思います。DataRobotよりも、機械学習そのものの認知を拡大していこうという課題意識を持って、がんばっているところです」(椎橋さん)
今は事業部から相談されている案件をベースに、ディープラーニングによる画像認識や写真の自動タグ付けといったシステムの開発を進めているという。今後もDataRobotの活用範囲を広げていく考えだが、ライセンスも含めて決して安い投資ではない。しかし、それに見合った価値があるというのが、リーダーである林さんの結論だ。
「もちろんライセンスは決して安いものではありません(笑)。それでもデータサイエンティストを新たに雇うよりも断然安いと考えています」(林さん)
これからも続くであろう、データ解析人材の不足。これを解決する方法として“自動化”は今後の大きなトレンドになるかもしれない。
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