それは「マジで価値ある」ことか?――ブレないテーマを見極めるコツ:「3か月」の使い方で人生は変わる(2/2 ページ)
“クラウド会計ソフト”に理解がなかった時代に「クラウド会計ソフト freee」をリリースした裏には、「絶対に価値がある」という強い確信があった。3カ月取り組むテーマで確実に“革新”を起こすために、問うべきこととは……。
サービスの“革新”には「マジ価値」を問え
とはいえ、僕たちのアイデアは、周りに聞いてもなかなか出てこない「解」であり、周りに肯定的な意見はほとんどなかったことから、僕たちも「一部の分かってくれるユーザーのニーズを、強烈に満たすことができればよし」という、ある種の諦めもあった。
ところが、いざ「クラウド会計ソフト freee」をリリースしてみると、僕たちの想像をはるかに上回る爆発的な反響が得られた。「こういうサービスを待っていた!」というユーザーからの声がSNS上で相次いで話題となったのだ。一時は、アクセスが集中しすぎてWebページのサーバが落ちてしまい、サービスを停止せざるを得ないほどだった。
そして、マーケティング活動はほとんどしていなかったのに、リリースして2カ月で、4400以上の事業所に使ってもらえる状況が生まれたのだ。これは、SNSのリツイートや口コミで評判が広がったためだった。
もし、「そうか、お客さんが求めているなら、速く入力できるものを作る必要があるな」と請け合っていたら、小さな改善はできただろう。でも、そのサービスによって中小企業の経理業務を自動化するというイノベーションは生み出せなかったはずだ。顧客の声は、サービスを改善する局面では非常に重要だ。しかし、サービスを革新する局面では必ずしもそれだけではない。
この経験から、自分たちが信じるものをつくることに集中する「マジ価値」という考え方が生まれた。ユーザーの要望や意見をそのまま受け入れるのではなく、たとえ「いらない」と言われたとしても、自分たちの信じる道を進む方がずっと大切だと痛感したのだ。そしてある意味、「いらない」といわれていること自体が業界のニッチな状況をつくる参入障壁となっていたのだ。
「マジ価値」は、freeeという会社の価値基準にとどまらない。何かやりたいことがあるとき、インパクトのある新しいサービスを生み出そうとするとき、万能に役に立つ考え方だと思っている。周りの声に流されたり、振り回されたりしないためにも、意味のある問いかけだ。
「これがベストな解決策だ」と自分自身で腹落ちしているなら、周りから言われたことではなく、自分が信じたことに忠実になるべきだと僕は思う。
●ポイント:
自分が出した「ベストな解決策」は信じ切る
著者プロフィール:佐々木大輔(ささき・だいすけ)
freee(フリー)創業者・代表取締役CEO。1980年東京生まれ。一橋大学商学部卒。大学在学中に派遣留学生として、ストックホルム経済大学(スウェーデン)に在籍。また、インターンをしていたインターネットリサーチ会社のインタースコープ(現・マクロミル)では、データ集計システムやマーケティングリサーチ手法を開発。卒業後は、博報堂でマーケティングプランナーとしてクライアントへのマーケティング戦略の立案に従事する。その後、未公開株式投資ファーム・CLSAキャピタルパートナーズでの投資アナリストを経て、ALBERTの執行役員CFOに就任。2008年にGoogleに参画。日本におけるマーケティング戦略立案、Googleマップのパートナーシップ開発や、日本およびアジア・パシフィック地域における中小企業向けのマーケティングの統括などを担当。中小企業セグメントにおけるアジアでのGoogleのビジネスおよび組織の拡大を推進した。
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