AWSに顧客を奪われるな! Windows Server新環境への移行に向けたマイクロソフトの“深謀遠慮”:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業システムのサーバOSとして数多く利用されている「Windows Server 2008」のサポート終了に伴い、日本マイクロソフトが新しい利用環境への移行支援策を打ち出した。その発表会見では競合に対抗した“深謀遠慮”が感じられた。
戦略パートナーの取り組みに見て取れるAWSへの対抗意識
さて、これまでが今回の日本マイクロソフトの会見での発表内容だが、実はこの会見では競合に対抗した同社の“深謀遠慮”が感じられた。競合とはどこか。会見後、高橋氏にも確認したが、やはり、クラウドとしてAzureの最大のライバルであるAmazon Web Services(AWS)である。
発表では、基本的にマイクロソフトの利用環境の中での移行に終始していたが、同社にとって最も警戒すべきは、この移行期にAWSへ顧客を奪われてしまうことである。AWSジャパンもそこは虎視眈々と狙っており、5月にAWSへの移行支援策を打ち出している。従って、日本マイクロソフトの今回の移行支援策は、AWSに顧客を奪われないための手だてでもある。
そうした視点で捉えると、とくに興味深いのは、戦略パートナーにおける取り組みだ。まずは図4に示すように、有力な戦略パートナーを57社も集めたのは、もちろん移行支援策をしっかりと遂行するためではあるが、AWSとのこの分野でのパートナー勢力の違いを見せつける狙いがあるのは明らかだ。
さらに見ていくと、会見で登壇した伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、NTTデータ、オービックビジネスコンサルタント(OBC)、冨士ソフト、日本ビジネスシステムズ(JBS)、富士通、NECの7社のうち、CTC、NTTデータ、NECの3社はマイクロソフトの強力なパートナーであるとともに、AWSの「APNプレミアコンサルティングパートナー」にも名を連ねている。これはマイクロソフトによるAWSパートナー制度への“揺さぶり”ともいえるだろう。
そして、とりわけ対抗意識を感じさせられたのは、5月にAWSジャパンが移行支援策を発表した際にパートナーの2社として会見に臨んだ冨士ソフトとJBSが、両社とも今回の日本マイクロソフトの会見で登壇したことだ。これには日本マイクロソフトの執念がうかがえた。
加えていえば、富士通とOBCはマイクロソフトの非常に緊密なパートナーである。つまり、57社を集約した7社でも、これだけさまざまな立ち位置のパートナーが集まっていることを、日本マイクロソフトはこの施策で誇示しているのである。(写真1)
左から、日本マイクロソフトの高橋氏、NECの大塚幹昌システムプラットフォームビジネスユニット プラットフォームソリューション事業部長代理、富士通の門間仁データセンターサービス事業本部VP兼サービス開発事業部長、日本ビジネスシステムズの牧田幸弘 代表取締役社長、冨士ソフトの阿部和夫MS事業部長、オービックビジネスコンサルタントの和田成史 代表取締役社長、NTTデータの吉田勇一データセンタ&クラウドサービス事業部クラウドサービス統括部長兼ITアウトソーシング担当、伊藤忠テクノソリューションズの坪井聡 流通・EPビジネス企画室マーコム・ベンダーリレーション部長、日本マイクロソフトの浅野智 業務執行役員クラウド&エンタープライズ本部長
ただ、こうした戦略パートナーにおける取り組みを見ると、逆にマイクロソフトがAWSをいかに強く意識し、相当な危機感を抱いているかが分かる。AWSも今後、さらに対抗して注力してくるだろう。
Windows Server 2008に関連する市場は大きく、多くの日本企業のIT環境に影響を与えるだけに、競争が激しくなって、ユーザーにとって新しい利用環境へのより良い移行の手だてが選べるようになるのは結構なことである。ただ、マイクロソフトにとってこの分野は企業向けのコアビジネスだけに、何としてもAWSに顧客を奪われるわけにはいかないという決意だろう。それが戦略パートナーの顔ぶれにも如実に表れた今回の会見だった。
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