日本のCIOは「CxO四天王の中で最弱」? この状況はどうしたら変わるのか:CIOへの道(3/5 ページ)
クックパッドの情シス部長とITコンサルの、「これからの情シスはどうあるべきか問題」を語る対談の後編。テーマはこれからのIT部門の役割や、攻めの情シスについての考え方、日本の「CIO不在問題」はどうすれば変わるのか――。2人の意見はいかに。
日本のCIOは「CxO四天王の中で最弱」 どうすればいい?
中野氏 ちなみに、情シス部長とCIOって何がどう違うのでしょう。 いきなりCIOに就任する人はほとんどいなくて、大抵は情シス部長のような役職を経ると思うんですけど、「この両者の差って何だろう」と考えることがあります。
白川氏 その点については私はシンプルに考えていますね。CIOは役員なので、役割上、IT関係を見ているものの、基本的には「会社の全体最適を考えている」ということだと思います。一方の情シス部長は、やっぱり部門の代表者という立場が強いですよね。たとえ部長であっても、全社最適の視点で考えられる人ならCIO寄りの人だといえるでしょう。一方で「ITの立場から言うと〜」みたいなのが口癖の人だと、途端に情シス部長っぽい雰囲気が漂い始めるのかと。
中野氏 なるほど。部門代表と経営の差は大きいですね。情シスの仕事で難しいのは、社内の部門をまたぐ案件も多く、部門の人間でありながら経営がやるような仕事もしなければならないことがあるかなと。
実は以前、ある会社で、ボトムアップでシステム刷新プロジェクトを推進しようとしたことがあるんですが、そういう全社レベルでシステムを変えるようなプロジェクトを遂行する上では、経営の視点から見たプロジェクトの目的や、その背景にある経営戦略などが腹落ちしていないと、どうしてもしっくり来ないのですよね。施策を打っても「対症療法なんじゃないか」と感じて、どうもすっきりしない。普通に仕事をしていても経営者目線が分からないんですよ、ただの平社員だから(笑)。
ですので、独自に経営の勉強をしたり、経営陣が飲み会でワイワイやっているところに突入していって何を考えているか観察したり、隙あらば「今度のシステムの中期計画のことなんですけど」と話を持ち掛けてうっとうしがられたりしてました。「お前はいつも仕事の話ばかりしてるな」って(笑)
白川氏 飲み会でシステムの話をするんですか?
中野氏 はい。忙しいからそういう場所でしかつかまらないので……。といってもたぶん、私の方が忙しかったのですが(笑)。あとは、そういう場では皆さん機嫌がいいので、うまいこと決裁が取れないかなぁと。
白川氏 飲み会の雰囲気の力を借りて決裁を取ると!
中野氏 はい(笑)。どうしてそういう事態になるかというと、会社全体に影響するシステム投資戦略やら中期計画の策定、そしてその実行を“一介の平社員”がやっていたからなんですね。危機感を覚えた現場の最前線の社員が「このまだと会社がダメになる」という義憤に駆られて改革しようとするようなことは、わりとあるのではないでしょうか。
ただ、会社の課題や構造的な問題を何とかするなんていう、大きな権限を持っている人でも大変なことを、権限もリソースもない平社員がどうにかしようとすれば、やれることは何でもやるしかない。手段は選べず、リスクも取らざるを得ない。それで討ち死にしたら、目も当てられないですよね。報酬だってリスクに対して全く見合わない。だからやっぱり、そういうやり方は邪道だと思うのです。
私は「システム投資は経営の仕事」だと思っています。本来は、しかるべき経験と能力を持ったCIOなりがいて、自らの責任と引き換えに権限を持ち、経営戦略をシステム投資戦略に反映させ、それをマネジャーたちとしっかり共有して戦術レベルに落とし込む――というのが王道ですよね。システム統合やBPRという、ものすごくインパクトの大きな案件を、現場のボトムアップでやらざるを得なくなるというのには違和感を覚えますね。
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