情報部門は一番の“業務コンサル”であれ――コーセー 情報統括部長 小椋敦子氏:長谷川秀樹のIT酒場放浪記(2/5 ページ)
会社全体の業務の流れを把握できる情報部門は“業務コンサル”であるべきと語るコーセー 情報統括部長 小椋敦子氏。女性ならではの視点で斬る、AIやRPAとの向き合い方や、女性情シス部長・CIOを育てるコツとは?
事業会社の情シス部門は“業務コンサル”であるべき
長谷川: 大企業の人って、AWSを知った瞬間に「これだ!」とはあまり思わないと思いますけど、思っちゃったんですね。
小椋: 時間課金で、ハードウェア構成も柔軟に変えることができて、今までのハードウェアが持っている制約を思想的には全て取っ払うわけですよね。考え方がすごく合理的で、「こんなに素晴らしいサービスが世の中にあったんだ」と。
長谷川: でも、大手の会社でAWSを使っているところも少ないタイミングで、よく「使ってみよう」となりましたね。
小椋: 当時の部長は私以上にとがった考えの人だったので、全く問題はありませんでした。経営層を説得するのが難しいという話はE-JAWSかいわいでもよく出ますよね。そこに関しても、「Amazonが自社の基盤として使っているものをサービスとして提供しているんです」と説明したところ、「あの世界最大のECサイトが動いている基盤であれば問題ないのでは」ということで、オーナー企業ということもあって、細かいことは言われませんでしたね。
長谷川: 多くの企業で苦労されているのは、情報セキュリティのルールにどう適合させるかみたいな話で、クラウド化するにしても個人情報が入っているようなものは最後になるようなことも多いですけど、御社はiPadとAWSでいきなり始めたわけですね。
小椋: 最初からiPadありきでしたから。当時iPadを販売しているのはソフトバンクだけだったんです。通信キャリアだということもあって、Radius認証してダイレクトコネクトでAWSに完全にセキュアな通信をする方式で、サービスインしたばかりの段階でしたが、それなら確かにセキュアだなと思いました。ハードウェアの面でも、iPadはものすごく制約があってIT技術者から見ると使いづらいものですが、それはつまりセキュリティが高いということですよね。あの当時では、一番よい選択だったのかな、と思います。
長谷川: 小椋さんは、事業会社の情シスってどういう在り方がベストだと思いますか?
小椋: まずは、情報部門は“業務コンサル”でなきゃいけないと思うんです。今、全ての業務がシステムで動いていますね。ですから各部門の業務がどう流れているか、全体を把握できるのは情報部門しかいないわけです。全体の中でどこが停滞していて、どこが非合理的かが分かるのも情報部門しかいない。だから、われわれは一番のコンサルタントでなきゃいけないと思うんですね。難しいことですけど、まずそれが一番です。
もう1つは、われわれ情報部門としてはデジタルマーケティングの分野まで業務範囲を広げられていないのですが、少なくとも「データ連携や基盤を整備します」「データは統合して合理的に管理します」というところはわれわれのミッションと考えます。そういうベースメントの重要なところは絶対に守るという考えです。というのも、マーケティング施策は案件の流動性も高いんです。担当者の異動や、毎年の施策見直しなどによって案件が変更になった場合でも、システム部門メンバーは変わらないので、最後まで継続対応をして次の案件につなげていく、そういう地道な長期スパンの仕事ができるのも、IT部門しかないんですよ。
長谷川: なるほど。その考え方は面白いですね!
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