情報部門は一番の“業務コンサル”であれ――コーセー 情報統括部長 小椋敦子氏:長谷川秀樹のIT酒場放浪記(1/5 ページ)
会社全体の業務の流れを把握できる情報部門は“業務コンサル”であるべきと語るコーセー 情報統括部長 小椋敦子氏。女性ならではの視点で斬る、AIやRPAとの向き合い方や、女性情シス部長・CIOを育てるコツとは?
この記事は、「HANDS LAB BLOG(ハンズラボブログ)」の「長谷川秀樹のIT酒場放浪記」より転載、編集しています。
ハンズラボCEOの長谷川秀樹が、エンタープライズ系エンジニアが元気に働ける方法を探し、業界のさまざまな人と酒を酌み交わしながら語り合う本対談。
今回のゲストは、コーセーのシステムの内製化やクラウド化に力を入れてきた小椋敦子さん(情報統括部 部長)です。本シリーズ初となる女性の情シス部長を迎え、大企業における情シスの役割から女性の活躍まで、長谷川が気になっていたアレコレを伺いました。
震災でサーバ移設を余儀なくされ、内製化の価値を実感
長谷川: 小椋さんと最初にお会いしたのはいつでしたっけ?
小椋: 2014年に「E-JAWS」(※)が発足したときです。私も最初から参加していて、長谷川さんはコミッティメンバーでいらして。長谷川さんからいただいた名刺は、E-JAWSのロゴが入っているものでした。
(※E-JAWSはEnterprise JAWS-UGの略で、「AWS(Amazon Web Services)」を利用する企業のためのクローズドなユーザーコミュニティーのこと)
長谷川: あの幻の名刺! E-JAWSができるときに作ったんですよね。
小椋: 当時は三井物産、今はDELLのCTOの黒田(晴彦)さんが会長で、長谷川さんは副会長でしたね。他に積水化学の原(和哉)さんやミサワホームの宮本(眞一)さんもメンバーで、すごいユーザー会だな、と思ったのをよく覚えています。
長谷川: そうでした。一番初期の頃のエンタープライズ軍団ですね。そう思うと、なんだかジーンとしてくる……。あの当時、Googleの「G Suite」(当時の名称は「Google Apps」)を使っているところがAWSも使うパターンが多かったと思うんですけど、小椋さんのところもそういう感じだったんですか?
小椋: メールはGoogleを使っていたんですが、皆さんのように先進的に始めたわけではなく、東日本大震災の時に基幹システムやメールのサーバを置いていた場所が計画停電のエリアに当たって、システムをダウンしなければならない状況になったのがきっかけです。基幹システムについては、取りあえず3週間くらいで別のデータセンターに移設できたのですが、特にメールサーバはサーバダウンすると連絡もできないということでクラウド化を決め、2012年の年明け早々にGoogleに移行しました。
長谷川: 基幹システムの移設を3週間でやったのは、すごいですね。まず見積もりで3週間かかりますよね。
小椋: 長谷川さんのところと同じように、私たちも内製化を進めていたからなんです。Webサーバを置いているデータセンターがあり、基幹システムもそこに移設すれば社内専用線につなげられる状態でした。計画停電で何度も電源は落としていましたし、あとは安全に運んで電源入れればいいよね、ということで。
長谷川: なるほど、それは早いわけですね。いつ頃から内製化を?
小椋: 2002年から2006年にかけて基幹システム刷新プロジェクトで「SAP」を導入したのですが、それがほぼ外注で行い、最終的には非常にコストがかかりました。そこからですね。システム稼働後に、私がかつて一緒に仕事していた方がシステム部門の部長になり、その1年後にたまたま私がその下の課長として異動しました。その上司とは過去に研究所でサーバの設定やプログラムの内製化をやってきたので、とにかく内製化へのシフトを進めて、ちょうど2011年頃にはシステム改修やハードウェアの管理運用も内部の人間ができるようになっていました。基幹システムを速やかに移設したのは、部のメンバーにとっては大きな成功体験というか、自分たちでやることの価値を感じられた体験だったと思います。
長谷川: そうなんですね。その後、他の基幹システムもAWSでクラウド化していこうっていう流れですか?
小椋: いえ、AWSは2012年に店頭システムの導入時に使い始めました。そのときは2つの制約があって、1つはデータを統合して管理をする上でのセキュリティ。もう1つは、マーケティングの役員からの、端末は「iPad」が望ましいという指示でした。iPadを使ってセキュアなシステムをいかに構築するか検討していた中で、提案の中にAWSというサービスがあって「これだ!」と。そこからなんです。
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