中小企業の経営課題を二人三脚で解決――中小企業向けの無料相談サービス「よろず支援拠点」の使い方:目からうろこの行政サポート活用術(3/3 ページ)
国は全国47都道府県に、中小企業・小規模事業者・創業希望者のための経営相談所「よろず支援拠点」を設置している。売上や販路の拡大、資金繰り改善や事業再生に関わるものなど、経営上の悩みを広く受け付け、専門家がアドバイスや支援を提供してくれる、この無料相談サービスの詳細を紹介する。
会社の悩みを二人三脚で解決――チーフコーディネーターに聞く支援の実態
よろず支援拠点の良いところは先述のように、1つの相談窓口から支援が広がってワンストップでの解決を目指せるところ。その最初の窓口になるのがコーディネーターの方々だ。今回、埼玉県よろず支援拠点のチーフコーディネーターを務める越智さんに話を聞いた。
「原則、どのような経営相談にも対応します。中小企業の経営者は意外に孤独で、近くに相談できる相手が少ない。私たちに相談するとホっとするようで、表情が徐々に柔らかくなるのを感じることも多いですね」
そう語る越智氏によると、一番多い相談は、「売上を伸ばしたいが、どうしたらよいか」といった「売上拡大」に関するものだという。「まず、お話を伺い、ご相談者の事業の『良いところ、利点』を確認して、その素晴らしさについての認識をご相談者と共有することから始めます」(越智氏)
そして、「状況にもよりますが、ご相談者の売上増加目標が5%だとして、ポテンシャルがもっと高いと判断できたら、10%も可能ではないか、とより高い目標を勧めることもあります」という。
越智氏らコーディネーターは、「会社設立の理由は何か」「自社の強みは何か」「売上拡大の具体的な計画はあるか」「そもそもどんな夢をお持ちなのか」といったヒアリングを通じて、経営者と一体になり、計画を立てていくとのこと。
想像以上に、経営内容やその姿勢に突っ込むところがあるようだが、その理由は何だろう。
「ご相談者の『売上拡大』という前向きな姿勢を支えるモチベーションは、どのような背景によるものなのか、差し迫った事情なのか、経営者が本来やりたかった夢なのか。そうした『課題の本質』に迫ることによって、ご相談の内容も変わるからです」(越智氏)
直近の数字も大事だが、「課題の本質」がどこなのかを常に意識して計画を進めることが「大事」という考えだ。1人で事業に向き合っていると、つい脇道にそれてしまうことも起こりうるが、コーディネーターという第三者とともに事業を振り返ることで、確かな足取りで進めるという。
そうはいっても、コーディネーターは、ともに事業の責任を背負ってくれるわけではない。経営課題を「手助けをする立場」であることは留意したい。
「私たちへの相談には、助成金の取得に関するものもけっこうあります。中には『何か(助成金)ないですかね?』と、ざっくばらんにおっしゃる方もいます(笑)。もちろん対応しますが、ご相談者が『やりたいこと(計画)』が先にあって、その趣旨に合う助成金を検討するので、まずはやりたいことをお話いただくと、具体的な助成金への検討やアドバイスがやりやすくなります」(越智氏)
さらに、「実際の助成金申請にあたっては、第三者が読んでも分かりやすい申請書の書き方など、具体的なアドバイスを通じて、ご相談者に申請書を書いていただきます。ご本人が申請書を書けるようになることも支援の大切つな一環と考えています」とのこと。
「支援とは、ご相談者の経営の力、会社の力を伸ばすことだと考えます。例えば、助成金の申請書作成は、会社の『やりたいこと(考え)』を第三者に伝える力を伸ばすことにもなります」と越智氏は語る。ここでいう支援とは、自己の力を「伸ばす」ための支援というわけだ。
経営や会社の力を伸ばすわけだから、相談したからといってすぐに効果が出るわけでない。
「お付き合いの長い方も多くいらっしゃいます。埼玉県よろず支援拠点は4年前にスタートしましたが、中には4年近く定期的に相談にいらっしゃる方もいます。新しい課題がどんどん出てきて相談になるということは、会社が伸びている証。私たちも、ワクワクしながら、一緒に悩んで答えを探しています」(越智氏)
よろず支援拠点には、一緒に前に進もうというコーディネーターの熱意があふれている。何度も相談に来る人がいるのは、その支援に手応えを感じているからだろう。よろず支援拠点での支援に関する費用は不要なので、第三者に自分の会社を見てもらえるという機会を、試してみてはいかがだろうか。
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