かつて「亀田製菓」「京セラ」「ビックカメラ」も利用した! 政策金融機関「日本政策金融公庫」の活用法:目からうろこの行政サポート活用術(2/3 ページ)
「日本政策金融公庫(日本公庫)」は、政府100%出資の政策金融機関。これから創業する人や中小企業などへの事業資金融資や、経営課題に応じたコンサルティング、全国152支店の店舗網を生かしたマッチングや連携支援などを提供している。創業時や起業間もない時期に役立つ支援を中心にそのサービスを紹介しよう。
創業や新規事業への支援資金は「創業支援」「新事業育成支援」
日本公庫は、「これから会社を起こしたい」「新しい製品、サービスを開発、提供したい」といった、新たに創業する企業や創業間もない企業、新事業を計画している企業を支援してくれるサービスも手厚い。
具体的には、「創業支援」「新事業育成支援」の2つの支援メニューが用意されている。
これから創業するなら「創業支援」
創業支援は、これから創業を考えている人を対象に、創業前から創業後に至る活動を支援してくれるもの。創業に向けてのアドバイスや情報提供から、創業計画書の作り方や創業時に利用できる融資制度の紹介、創業後の販路開拓などに利用できるビジネスマッチングなどのサービスや経営に役立つ情報までを提供してくれる。
創業に関する情報収拾や相談は、中小企業診断士などの専門の相談員が予約制で約1時間じっくりと相談に乗ってくれる。同Webサイトに記載の「創業ホットライン」で受け付けている。土日も創業相談ができるということで、ビジネスパーソンや主婦など、平日に時間を取れない人にも便利だ。
「亀田製菓」「京セラ」「ビックカメラ」といった名だたる企業も、かつての創業時には、日本公庫の前身である中小企業金融公庫の資金援助を利用したとのこと(創業支援した企業については「日本政策金融公庫の創業支援」公演資料に記載あり)。
ちなみに、創業支援の平成28年度(2016年度)の融資実績は、2万8392先(前年度比107%)、2055億円(前年度比107%)で、性別、年齢別の動向としては、女性、若者への融資が増加しているという。
なお、創業計画書は、融資を受ける際に必要な書類で、必要額、理由、返済への展望などを記載する。数千万から億円という金額がこの書類で動くわけなので、いい加減には書けない。そんな初めての難所も、日本公庫がサポートしてくれるのは心強い。下図のような各業種の記載例も用意してくれている。
また、日本公庫の支援を得て創業した企業の事例も多数紹介されている。かなりの事例が掲載されており、いろいろな業種の“創業”をシミュレーションできそうだ。創業者たちが、何にフォーカスしてビジネスを加速させたのかを見てみるのも勉強になるだろう。
中小・ベンチャーの新しい取り組みを支援する「新事業育成支援」
新事業育成支援は、ベンチャーや中小企業が、新たなステージを目指すときなどに応援してもらえる支援だ。「高い成長性が見込まれる新たな事業に取り組む中小・ベンチャー企業」を支援する融資制度という位置付けになっている。
融資額は、新たな事業を行うために必要な設備資金と長期運転資金として、6億円。設備資金は20年以内(うち据え置き期間5年以内)、運転資金は7年以内(うち据え置き期間2年以内)が返済期間となっている。
事業化後7年以内の中小・ベンチャーで、
高い成長性が見込まれる新たな事業を行う人・企業が対象で、次の1〜3の全てに当てはまる必要がある点は注意されたい。
- 新たな事業を事業化させておおむね7年以内の方
- 次のいずれかに当てはまる方
- 日本公庫の成長新事業育成審査会から事業の新規性・成長性の認定を受けた方
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けた方
- 他企業に利用されていない知的財産権や中小企業技術革新制度にかかわる特定補助金などの交付を受けて開発した技術を利用して新事業を行う方
- 日本公庫 中小企業事業が継続的に経営課題に対する経営指導を行うことで、円滑な事業の遂行が可能と認められる方
参考までに、新事業育成支援の平成28年度(2016年度)の融資実績は、1641先(前年度比155%)、996億円(前年度比208%)で、中小・ベンチャー企業における新事業への挑戦意欲の高まりが見られたという。
活気あふれるベンチャーを支援
「新事業育成資金」の融資を得た事例から、ここ1、2年でのIT系企業の事例をいくつか紹介しよう。
クラウド型メール共有システムの開発・運営を行うベンチャー インゲージ(大阪府)
[平成30年(2018年)1月: 設備資金として、1000万円を融資]
メール、電話、チャット、Twitterなどの各種問い合わせチャネルを一元管理し、顧客問い合わせ対応業務を効率化するクラウドサービス「Re:lation(リレーション)」を開発。チームでのナレッジ共有などにより、生産性向上やスピーディーな顧客対応が可能になり、「対応漏れ」や「二重返信」といったトラブルを解消につながるという。導入企業の増加が期待されることから、事業拡大に必要な設備資金を供給。
Web企画・制作からイベントの運営まで一貫して行うベンチャー TABI LABO(東京都)
[平成29年(2017年)11月: 資本性ローンとして、5000万円を融資]
スマートフォンを中心にコンテンツ制作やトータルプロモーションの企画、制作、販売をワンストップで提供する同社は、ブランド認知、興味喚起、比較検討、購買促進までの流れ全てに対応でき、スマートフォン広告にありがちな短期的な“刈取り”ではない、長期的な関係構築が可能なサービスを提供。財務体質の強化を図るために資本性資金を無担保・無保証で供給。
スマートデバイスを最大限に活用するための技術を開発・保有する企業 アイキューブドシステムズ(福岡県)
[平成29年(2017年)6月: 運転資金として、1億円を融資]
スマートデバイス用統合管理プラットフォーム「CLOMO」を開発・提供する同社は、スマートデバイス管理サービス「CLOMO MDM」とスマートデバイス向けアプリサービス「CLOMO SECURED APPs」が主軸事業。iOS、Android、Windows、KindleのマルチOSをリモートで一括管理できる点が特徴で、導入企業の増加が期待されることから、事業拡大に必要な運転資金を供給。
ビジネスウェア領域でオンラインSPAを展開するベンチャー ライフスタイルデザイン(東京都)
[平成29年(2017年)9月: 運転資金として、4000万円を融資]
カスタムオーダーファッションレーベル「LaFabric」を展開。自社デザイン・開発により流通コストを最小限に抑え、消費者に直接届ける手法「オンラインSPA」を採用し、適正価格の高品質なオーダースーツ・シャツを提供。オーダー初回は実店舗で採寸し、2着目以降はスマホでもオーダーが可能。「買い物に行く時間がない」「納得のいくスーツ・シャツがない」といったビジネスパーソンのニーズに応えている。事業拡大に必要な長期運転資金を供給。
これらの他にも、「ニュース・刊行物等(新事業育成支援関連)」に多くの事例が紹介されている。「うちの会社も当てはまる!」という事例も見つかるかもしれない。
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