検索
インタビュー

旅館業界では“あり得ない”週休3日 それでも「陣屋」の売り上げが伸び続けるワケ【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(2/4 ページ)

旅館業界では珍しい週休3日を実現している、鶴巻温泉の老舗旅館「陣屋」だが、それでも売り上げも利益も伸び続けている。その裏にはAIやIoTを駆使した、最新の「おもてなし」があった。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 完全休業日を設けている旅館が珍しかったこともあり、陣屋が映画やドラマのロケ地に使われる機会が大きく増えたのだ。宿泊客の導線を気にすることなく、撮影のスケジュールが組めることから、制作会社のリピーターが増え、月に1回程度はそういった日が生まれるようになった。そういった業界からもまた、口コミで宿の評判は広がっていったのだ。

従業員が「まるまる2日」休めるよう、週休3日へ

photo 元湯 陣屋 代表取締役女将の宮崎知子さん

 週休2日制が軌道に乗り、2015年からは従業員の有給完全消化を実施。従業員の満足度向上への取り組みが本格化したころ、宮崎さんは改めて、週休2日制にしても従業員が2日休めていない問題に向き合うことにした。

 「火曜と水曜を休みにしたといっても、火曜日の午前は、月曜日に宿泊した方の見送りが必要なので、出勤しなければいけないメンバーが出てきます。そうなると彼らの休みは実質的に1.5日になってしまう。まるまる2日休んでもらうためには、もう1日休みを増やす必要があったのです」(宮崎さん)

 こうして、2016年1月から月曜日も休みとする週休3日制が始まった。月曜日は宿泊と夕食がないため、スタッフは通常の半分程度で済む。有給休暇を消化できていないスタッフに対しては、ほぼ強制的に月曜日に休んでもらうのだという。単純に計算すれば、月に1〜2回は3連休になる計算だ。

 陣屋の場合、社員の給与は年俸制であるため、休みが増えても給与が減るということはない。業務を効率的し、働く時間を減らしたことで、かつて利益を圧迫していた人件費は就任当初と比較して25%程度下がった。とはいえ、従業員数が減ったこともあり、一人一人の給与は上昇。社員の平均年収は、288万円(2008年)から約400万円(2017年)と4割ほど増加した。ホテル旅館業界の全国平均が約280万円ということを考えると、大きな開きがあることが分かる。懸案だった離職率も、約3%にまで減少したという。

 コストも減り、経営の体制が安定してきたことで、露天風呂付きの部屋を新設するなどハードウェアにも徐々に投資ができるようになってきた。最近では、より高いサービスレベルを求め、AIやIoTといった先端技術を活用し始めている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る