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旅館業界では“あり得ない”週休3日 それでも「陣屋」の売り上げが伸び続けるワケ【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(3/4 ページ)

旅館業界では珍しい週休3日を実現している、鶴巻温泉の老舗旅館「陣屋」だが、それでも売り上げも利益も伸び続けている。その裏にはAIやIoTを駆使した、最新の「おもてなし」があった。

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老舗旅館が活用する最新IoT

 例えば、2016年に導入した自動車のナンバー認識だ。駐車場の入り口にカメラを設置し、車が入場するとナンバープレートの番号を画像認識し、システムに登録している顧客情報と照合。リピーターが来た場合(特定できた場合)は、社内SNSに投稿されるのと同時に、自動でその内容が各スタッフに音声で通知される。

 これにより、これまでの来館履歴や同行者の氏名、車種、年齢といった詳細な顧客情報を把握し、ドアマンや仲居がすぐに対応できるというわけだ。

 「昔、ホテルオークラに数万人の顧客とその車のナンバーを覚えているという“伝説のドアマン”と呼ばれた方がいらっしゃいました。その方に名前を教えると、2回目以降は必ず名前で呼んでくれる。2回目の利用時にインパクトがある経験を残せると、ファンになってもらえる可能性がグッと高まります。しかし、私たちはレジェンドになれるだけの時間はありません。それならば、ITで同じクオリティーのサービスができるようアシストできればいいなと」(宮崎さん)

photo 陣屋では、IoTなどの先端技術を積極的に取り入れている

 カメラにナンバープレートが映ってから、情報が流れてくるまでの時間は約2秒。スタッフ同士の会話については、東芝の音声認識技術でChatter上に文字で残るようになっている。これによって、客の到着状況などが一目で把握できるようになり、スタッフ同士の連携もスムーズに行えるようになった。

 「お客さまとお話しするときなどはイヤフォンを外すのですが、タブレットに会話の履歴が残っているので、他の人に聞かなくても、今何が起こっているのかキャッチアップがすぐにできるのはとてもいいですね。皆が状況を把握しているので、『今5分くらいなら手伝えます』といったコミュニケーションも自然と生まれます」(宮崎さん)

 この他、大浴場でもIoTが活躍している。入り口に人感センサーを取り付けて客の入退場を感知し、入浴客が一定数を超えた際に、Chatter経由で(自動音声で)「メンテナンスに入ってください」とアラートを出すようにしているという。その指示を受け、手の空いているスタッフがタオルの補充や浴室の清掃に駆け付ける仕組みだ。これは夫の富夫さんが、ナショナルインスツルメンツのシステム開発ソフトウェア「LabVIEW」で作り上げたそうだ。

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