インタビュー
旅館業界では“あり得ない”週休3日 それでも「陣屋」の売り上げが伸び続けるワケ:【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(4/4 ページ)
旅館業界では珍しい週休3日を実現している、鶴巻温泉の老舗旅館「陣屋」だが、それでも売り上げも利益も伸び続けている。その裏にはAIやIoTを駆使した、最新の「おもてなし」があった。
これまでは、30分ごとや1時間ごとといったように、時間を決めて確認を行っていたが、浴室の利用時間は日によってまちまちだ。利用者数をベースとしたアラートにすることで、本当に必要なタイミングでスタッフが動けるようになった。さらに温泉の温度や水位もセンサーで測定しており、異常があればアラートが鳴るようにしている。
週休3日になっても、陣屋の売り上げが伸び続ける理由
先端ITの活用による効率化のかいもあって、週休3日になっても陣屋の利益は伸び続けている。そして利益だけではなく、売り上げも伸び続けているというから驚きだ。第3の柱としていたブライダル事業が大きく伸びたこともあるが、2009年から続けてきた単価の向上が功を奏し、直近1年の売り上げは6億1300万円となった。底を打った2009年の2億9000万円と比べ、2倍以上にまで増えた計算になる。
さらに陣屋“全体”の売り上げはこれだけではない。同社のシステムである「陣屋コネクト」を他の旅館業向けに外販する子会社「陣屋コネクト」を2012年に立ち上げており、その売り上げは約2億円(2018年8月期)にまで伸びている。陣屋本体と合わせ、グループ全体の売り上げは約8億円を超えた。
立ち上げてからわずか6年で、グループ全体の売り上げの2割以上を占めるまでになった「陣屋コネクト」。自社向けに開発してきたシステムを外販することになったきっかけは、「従業員がシステムに満足してしまった」ためだったという。(後編に続く)
関連記事
- 特集:Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜
- 借金10億円、倒産まであと半年――創業100年の老舗旅館「陣屋」をたった3年でV字回復させた方法
神奈川県秦野市にある鶴巻温泉。閑静な住宅街の中に、働き方改革の先端を走る老舗旅館「陣屋」がある。業界では珍しい週休3日を実現するなど注目を集めているが、10年前は10億円の借金を抱え、あと半年で倒産というところまで追い詰められていた。 - NECから温泉旅館へ転身――元エンジニアが挑む、老舗ホテルのIT化
箱根湯本にある老舗ホテル「ホテルおかだ」。このホテルでは、AIを導入するなど積極的なIT活用を進めている。その中心となって動いている原さんは、NECにも勤めた経験のあるエンジニアという異色の経歴を持っている。 - 創業63年、箱根の老舗ホテルが人工知能を導入した理由
公式Webページに機械学習を使ったFAQシステムを導入した、箱根の老舗ホテル「ホテルおかだ」。こうした最新ITを導入する裏には、旅行業界における大きなビジネスモデルの変化があった。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.