NECから温泉旅館へ転身――元エンジニアが挑む、老舗ホテルのIT化:【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(1/3 ページ)
箱根湯本にある老舗ホテル「ホテルおかだ」。このホテルでは、AIを導入するなど積極的なIT活用を進めている。その中心となって動いている原さんは、NECにも勤めた経験のあるエンジニアという異色の経歴を持っている。
日本を代表する温泉リゾート「箱根」。年間約1900万人の観光客が訪れ、およそ400万人が宿泊する。火山活動の影響で、客足が遠のいた時期もあったが、最近は回復傾向にあるという。
温泉郷の玄関口ともいえる箱根湯本には、伝統ある旅館から、大規模ホテルまで40件以上が軒を連ねているが、近年、積極的にIT導入に取り組むホテルがある。創業63年、年間約15万人が訪れる老舗ホテル「ホテルおかだ」だ。
ホテルおかだは2017年5月、公式Webページに人工知能(機械学習)を搭載したFAQシステムを導入した。アナログな“おもてなし”のイメージが強い旅館業界にあって、老舗のホテルがなぜAIを導入するに至ったのだろうか。その裏側に迫った。
ITエンジニアから箱根の老舗ホテルへ転身
ホテルおかだのIT導入を進めているのは、営業部長の原洋平さんだ。「営業部長がなぜITを?」と思うかもしれないが、原さんはもともとNECで仕事をしていた経歴もあるバリバリのエンジニアだった。
「小さいころからモノを作るのが好きだったんです。幼稚園の頃の夢が『大工さんになる』だったくらいで(笑)。小学校4年生の時に、親戚からPCをもらったことをきっかけに、見よう見まねでプログラムを書き始めていました。自作のゲームを人に遊んでもらうとか、モノを作ってとか、人に使ってもらえるのかとかが楽しかったんですよね。自分の技術をダイレクトに人に伝えられる点が魅力的だと感じ、そのままITの道へ進みました」(原さん)
ホテルおかだは同族の企業で、原さんは創業者の孫にあたる。エンジニアの仕事が楽しく、全く箱根に戻るつもりはなかったが、30歳を控えた時期に両親から相談されたことをきっかけに、ホテルおかだに転職することを決めたという。
「自分がいろいろ好きなことを自由にできているのは、やっぱりここにホテルがあって、従業員の方々が働いて、お客さまに来ていただいて、そこでお金が生まれて、自分がその恩恵を受けているというのは前から思っていて。恩返しをしたいという気持ちが大きかったですね」(原さん)
こうして2009年、ホテルおかだに“戻ってきた”原さん。旅館の仕事を知るために、皿洗いや床敷きといった下働きから始めた。そこで待っていたのは、想像以上にアナログな世界だった。
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