IoTが変える観光の姿――瀬戸内の離島が「電動バイクレンタル」を始めた理由:食とアートの島を巡る(1/3 ページ)
ソフトバンクと日本オラクルが、瀬戸内海の豊島で電動バイクのレンタル事業を始めた。LTE通信を行う車載機器をバイクに内蔵し、位置やバッテリー残量など、さまざまなデータを取得するという。IoTは離島の観光にどんな影響を与えるのだろうか。
瀬戸内海に浮かぶ、食と現代アートの島「豊島」。岡山県と香川県のちょうど中間に位置し、豊かな自然と島内の至るところで望める絶景が特徴だ。フェリーを使わなければ行けない場所ではあるものの、2010年から3年ごとに開催されている「瀬戸内国際芸術祭」の会場になっていることもあり、近年は観光客が増えているという。
この全周約20キロ、人口1000人あまりの小さな島で、IoTを活用した新たなサービスが3月26日に始まった。電動バイクのレンタルサービス「瀬戸内カレン」だ。ソフトバンクグループのPSソリューションズが運営しており、豊島を訪れる観光客にホンダの電動バイク「EV-neo」を貸し出す。利用料は1日で3800円(税込、以下同)、半日で2700円だ。
瀬戸内の離島に「電動バイク」が向く理由
観光地として注目が高まっている豊島だが、島内の移動手段には課題がある。島内の各所に観光スポットが散らばっているが、高低差があるため、徒歩での移動には向かない。観光客の主な移動手段は、電動アシスト付き自転車やレンタカー、タクシー、そして乗り合いのシャトルバスとなる。
今回レンタルサービスが始まる電動バイクは、一度の充電で移動できる距離が30〜50キロと長距離の移動には向かない(電動自動車も100〜200キロ程度)ものの、全周約20キロの豊島であれば、島内を1日移動しても無充電で済む可能性が高いことから、十分実用に耐えうる。
「電動バイクは、自動車を使うほどではないが、自転車では遠すぎるくらいの地点へ移動する際に最適。豊島としても、島内にいくつものガソリンスタンドを設置するより、充電器を置けば済む電動バイクのほうが維持費の面で経済的だ」(ソフトバンク ITサービス開発本部 M2Mクラウド事業開発室長 山口典男氏)
本サービスは島を訪れる前にネット予約ができるのも特徴だ。レンタサイクルやレンタカーのほとんどは現地での申し込みか電話予約しか行えず、特に海外からの観光客にとって使いづらい面がある。「豊島に来たはいいものの、レンタサイクルが売り切れで途方に暮れるといったケースもある」(山口氏)そうだ。
2016年は「瀬戸内国際芸術祭」が開催されるため、大勢の外国人観光客が訪れると予想される。彼らが豊島に来やすい環境をどう整え、どのように豊島の魅力を伝えていくのか。昨今叫ばれているインバウンド需要の面でも「瀬戸内カレン」は意義のある取り組みといえるだろう。
こうした環境への負荷が低い電動バイクのレンタルは海外の観光地からも注目されているそうだ。「電動バイクのレンタルは、空気がきれいなASEANなどで注目されています。豊島と同様に、比較的狭いエリアに観光スポットが点在する、カンボジアのアンコールワットで同様のサービスを始める計画が進んでいる」(山口氏)
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