“言葉の壁”を超えるタクシー、鳥取で実験中 ITで訪日観光客と運転手をつなぐ(1/2 ページ)
海外から訪れた人に、もっと鳥取県の魅力を知ってほしい――。観光タクシーのドライバーが抱える“言葉の壁”という課題をITで解決しようという取り組みが注目を集めている。
砂丘で有名な鳥取が今、海外観光客の注目を集めている。韓流ドラマのロケ地となったことから韓国人観光客が増加。中国で人気を博している漫画「名探偵コナン」のエピソードゆかりの地を訪れたいという、中国人観光客も急増しているという。
そんな観光客の足として活躍しているのが、鳥取市の「1000円タクシー」。1人1000円で最大3時間までタクシーを貸し切りにできるという便利なサービスだが、人気の秘密は安さだけではない。実はドライバー全員が、観光名所の詳しい解説ができる「観光マイスター」の資格を持っているのだ。
観光マイスターの資格は、観光案内のプロを育てる鳥取観光大学で歴史や文化を学び、試験をクリアしてやっと得られるもの。1000円タクシーに乗ると、“鳥取観光のプロ”の解説付きで観光地を楽しめるというわけだ。
そんな人気上昇中の1000円タクシーが今、直面しているのが“言葉の壁”。ドライバーは英語が苦手な高齢者も多く、海外から来た観光客に鳥取の魅力を伝えきれないもどかしさを感じているという。ドライバー自身も、「必要最低限の情報は、身振り手振りで何とか伝えてはいるものの、もっと鳥取の自然や歴史についてスムーズに伝えられたらと思うことも多い」と話す。
外国人観光客の“話し言葉”を日本語に
そんな“言葉の壁”に悩む鳥取でスタートしたのが、車載型翻訳サービスの実証実験。運転手と外国人観光客の“話し言葉”を相手の言語に翻訳し、合成音声で伝えるコミュニケーションをタクシーの中で実現しようというものだ。
タクシーの運転席と後部座席にはスピーカーとスマートフォンが取り付けられ、観光客が自分の国の言葉で話すと、スマートフォンを通じて音声データがクラウド上の翻訳システムに送信される。システム側で日本語に翻訳されたデータはタクシー側のスマートフォンに送信され、日本語音声としてドライバー側のスピーカーから流れる仕組みだ。ドライバーが話した日本語も、同じフローで後部座席の外国人観光客に伝わる。
タクシーを使ったデモでは、運転手と観光客との間で行き先や戻り時間を伝えたり、お勧めのレストランや観光名所を聞いたりといった会話が交わされた。「鳥取砂丘に行きたいのです」「分かりました、15分後に到着します」「もうすぐ目的地に到着します」「ありがとうございます、30分後に戻ってきます」「どこで食事をしますか?」「おいしいレストランはありますか」「カニがおいしいです」――このようなシンプルな会話は、翻訳ミスもなく正確に伝わっていた。
翻訳にデータ通信を使う場合、会話のタイムラグが気になるところだが、4〜5秒程度とストレスを感じるほどではない。ドライバーにとっても、身振り手振りで伝えるよりは、ストレスのないコミュニケーションができそうだ。
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