“言葉の壁”を超えるタクシー、鳥取で実験中 ITで訪日観光客と運転手をつなぐ(2/2 ページ)
海外から訪れた人に、もっと鳥取県の魅力を知ってほしい――。観光タクシーのドライバーが抱える“言葉の壁”という課題をITで解決しようという取り組みが注目を集めている。
翻訳精度を高めるための2つのアプローチ
タクシーは、行き先や時間を聞き間違えると観光客のスケジュールに影響が出てしまうことから、いかに翻訳の精度を高められるかが重要なポイントになる。例えば、観光客が「岩美町に寄って横尾棚田を見たい」と言った場合、翻訳システム側で「鳥取県の岩美町」なのか「島根県の石見町」なのかを判断するのは難しいという。
今回、実証実験のシステム面を担当したKDDIの技術開発本部長、宇佐見正士氏は、「これを間違えると数十キロ離れた場所に行ってしまうなど、大変なことになる。こうした課題を実証実験で解決したい」と意気込む。
KDDIは、2つのアプローチで翻訳精度の向上を目指す考えだ。1つは翻訳辞書のチューニング。「ラッキョウ畑」「砂の美術館」といった鳥取固有のランドマークを登録することで翻訳精度を高めていく。今回の実証実験では、数千語規模の辞書を作成しているという。
もう1つは、観光客が話した内容とGPSの位置情報を組み合わせることで、翻訳精度を高めようという取り組みだ。具体的には、例えば鳥取県内で観光客が「いわみちょうに行きたい」と言った場合、今、いる場所に近い「鳥取県の岩美町」と推測して変換するようなやり方だ。今後はさらに、観光客が検索したキーワードと位置情報を連携させる方法なども検討しており、宇佐見氏は「どの観光地に行った人がどんな言葉を検索したか、どこをどう動いたか――といった情報を集めて分析することで、より正しい翻訳に近づけたい」と話す。
実際に1000円タクシーに乗ってみると、その楽しさは格別だ。歴史的な名所の解説はもちろん、長年住んでいる運転手だからこそ分かるお勧めの食事処から、地元住民の趣味が高じて生まれた博物館の話、空港では売っていないお土産が買える店の情報まで、次から次へと面白い話が飛び出してくる。こうした地元ローカルの話は、訪日観光客にとっても興味深いはずだ。
今、日本では2020年に向けたインバウンド対策が急務となっており、鳥取市の経済観光部で部長を務める大田斉之氏は、「実証実験をきっかけに、全国にインバウンド対策が波及すれば」と期待を寄せている。
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