IoTが変える観光の姿――瀬戸内の離島が「電動バイクレンタル」を始めた理由:食とアートの島を巡る(2/3 ページ)
ソフトバンクと日本オラクルが、瀬戸内海の豊島で電動バイクのレンタル事業を始めた。LTE通信を行う車載機器をバイクに内蔵し、位置やバッテリー残量など、さまざまなデータを取得するという。IoTは離島の観光にどんな影響を与えるのだろうか。
電動バイク×IoTを実現する仕組み
瀬戸内カレンは、IoTを取り入れたサービスという点でも注目すべき点は多い。バイクにソフトバンクのLTE通信が可能な車載端末を搭載し、位置情報や加速度といったデータを5秒ごとに取得。急発信や急ブレーキに加え、本体が転倒したといった状態も判定できるという。取得したデータはクラウド上に送られ、Webブラウザ上での一覧が可能だ。
充電状況の確認は、ソフトバンクが開発した充電・認証システム「ユビ電」を使って行う。充電ケーブルを通じて、認証信号を双方向で通信する個体認識技術により、プラグを挿すとクラウド上で認証を行う。認証なしには通電されないため、不正利用を防げるというわけだ。走行中のバッテリー残量については、車両の位置や走行距離を基に推算しているという。
システム実装まで3日、クラウドで爆速構築
バイクの管理システムは、日本オラクルのPaaS「Oracle Cloud Platform」を利用して構築している。IoT向けの機能である「Oracle Internet of Things Cloud Service」などを使い、端末から収集したデータの可視化や分析、端末の管理を行う。
クラウドサービスということで構築までの時間は短く、「片手間でも2〜3日で実装でき、1週間もたたずに稼働にまで持っていけた。あらためてクラウドのスピードを実感した」(日本オラクル)という。現在は現在地や稼働状況、バッテリー残量の把握にとどまっているが、今後は危険区域への立ち入りや、位置情報を参照してフェリーの出航情報を利用者に通知するといった各種サービスを実装していく構えだ。
「将来的には、決済や利用状況のデータから観光ルートを提案するような施策もできればと考えている。観光客の質問に対して、機械学習を活用しながら適切な回答をしていくサービスも行いたい。こういうニーズをすぐに実現できるのがクラウドの力。国内だけではなく、海外にも通用するビジネスを豊島から発信したい」(日本オラクル 専務執行役員 三露正樹氏)
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