アイデアは現場にある、問題は“それをどう拾うか” KPMGの調査で分かった「デジタル変革の勘所」:Weekly Memo(2/2 ページ)
デジタル変革への取り組みに対し、グローバルと日本の企業のCEOにはどのような違いがあるのか。KPMGコンサルティングが、自らの調査結果をもとに解説した内容が興味深かったのでお伝えしたい。
まずは顧客起点でビジネスモデル創出の議論を行え
5つ目は、デジタル変革に対するCEOの準備について。「自社の経営モデルの抜本的な変革を率いていく準備が個人的にできている」と答えたのは、図2のように、米国91%に各国が続く中、日本は47%で最下位だった。ここでいう「デジタル変革に対する準備」とは、宮原氏によると「技術リテラシーではなく、変革へのコミットメント」を意味する。この5つ目の解説を終えた同氏が、今回の調査結果における印象として語ったのが、冒頭の発言である。
6つ目は、顧客データ保護に対する認識について。「顧客データの保護は、自らの重要な責務である」との認識に対し、図3のように、米国89%に各国が続く中、日本は42%で9位だった。デジタル変革への対応の遅れが、顧客データ保護の責務への意識にも影響しているとみられる。
7つ目は、AI・データの活用について。今後3年間に、AIの活用が自社にもたらす最大の効果について聞いたところ、図4のような結果となった。目を引くのは、日本が1番目に「経営の機動性の向上」を挙げていることだ。宮原氏は「日本のCEOはAI・データの活用による経営スピードや成長の加速に期待を寄せている」と解説した。だが、それがグローバルでTOP5に入っていないのは、米国企業などではもはや当然のことだからではないか。この結果は非常に興味深い。
8つ目は、AI・データの活用に必要な人材について。結果は図5のように、グローバルおよび日本とも「データサイエンティスト」を1番目に挙げた。ただ、グローバルでは2番目に「最先端技術の専門家」、5番目に「デジタル変革の責任者」が挙がっている一方、日本では5番目に「シナリオおよびリスクモデリングの専門家」が挙がっていることから、宮原氏は「AI・データの活用について、グローバルはすでに“実行段階”なのに対し、日本はまだ“実行計画段階”にあるといえる」との見方を示した。
そして、同氏は最後にこんな見解を示した。
「日本企業の間でもデジタル変革やAI・データの活用に対する企業の意識が高まってきているのは良いことだが、経営トップが関係部署の現場に対して、うちもデジタル変革を進めよ、AIをうまく活用せよ、と指示し、困った現場の方々から私どもにご相談に来られることが増えてきた。しかし、これは順番が逆。まずは社内において、顧客起点でビジネスモデルを創出するための議論を徹底して行うべきだ。デジタル変革やAIは、あくまで道具立ての話。肝心のアイデアは自社内にある」
もう1つ、付け加えれば「アイデアは自社内の現場にある」ということだろう。現場とはつまり「顧客起点の着眼」である。これがまさしく、デジタル変革の勘所といえそうだ。
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