申請から承認までの平均時間が5分の1に RPAだけじゃない、DeNAのデジタルレイバー徹底活用術:さらば、人手による非効率な“作業”(1/2 ページ)
変化が激しい世界で勝ち続けるために、可能な限り人手による非効率な作業をなくし、スピード感のある仕事をすることが求められるWebサービスの世界。DeNAはどんな方法でムダをなくし、本業に専念できる環境を作っているのか。
少子高齢化による人手不足が深刻化する中、企業の競争環境は厳しさを増す一方。そんな状況下で企業が成長し続けていくためには、可能な限り人手による非効率な作業をなくし、従業員がスピード感をもって仕事ができる環境を用意する必要がある。
厳しい競争を勝ち抜いている企業は、RPA、AI、botといったトレンド技術をどのように活用し、従業員が本業に専念できる環境を作っているのか――。2018年9月19日、ITmediaエンタープライズ編集部主催のイベント「実践的デジタルレイバー導入カンファレンス RPA、AI、botで働く人の能力を開放せよ」が開催され、RPAやAI、botなどの活用にいち早く取り組む企業の事例や、デジタルレイバーを取り巻く最新事情が紹介された。
本稿では、ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)の経営企画本部 IT戦略部で部長を務める成田敏博氏による基調講演と、セールスフォース・ドットコムのプロダクトマーケティング シニアマネジャー、大森浩生氏による「Salesforce Einstein」の解説を紹介する。
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「その業務、本当にデジタルレイバーに任せるべきか」を精査――DeNA
基調講演に登壇した成田氏は、DeNAにおけるデジタルレイバーの導入と活用事例を紹介した。
DeNAはこの1年、RPAやチャットbotなどの導入プロジェクトを推進してきた。RPAに関しては、2017年6月に導入プロジェクトを立ち上げ、ロボットの活用による業務効率化に取り組んでいる。導入したRPA製品は「Blue Prism」。複数の製品を比較検討した結果、ロボットの変更管理や運用管理の機能が充実している点を評価して採用したという。
導入に当たっては、労働集約的でRPAの効果が表れやすい業務を洗い出すために、各業務部門を対象にアンケート調査を行った。そこで挙がった業務の中から、ロボットによる業務効率化の効果が出やすそうなものを、IT部門でさらに絞り込んでいったという。
「導入ありきで話を進めるのではなく、現場が候補として挙げた業務を改善するために『本当にRPAが有効なのか』を慎重に吟味した上で、RPAを適用するかどうかを判断しました。実際にRPAを適用したのはこれらの業務のごく一部で、実際にはRPA以外の手段で業務改善を実現した例も多くありました」(成田氏)
RPA導入の効果が既に表れている業務も多く、例えば人事部門における残業時間のモニタリング業務をRPAで代替したところ、「導入前は、百数十人の社員を対象として人事担当4人が手動でチェックしていた業務が、導入後は、全社員(2500人)を対象にロボットがチェックできるようになった」(成田氏)という。
DeNAでは他にも、チャットbotの活用を積極的に進めている。同社は社内の公式チャットツールとしてSlackを全面採用しており、社員同士の日々のコミュニケーションはSlack上で行っている。2018年1月、このSlackのチャットインタフェース上に、「社内ITに関する問い合わせに自動回答するチャットbot」を実装した。
具体的には、GoogleのDialogFlowに「問い合わせ内容とそれに対する回答」を学習させ、Slackのチャットを通じて投げ掛けられた問い合わせに自動で応答する。このチャットbotは社内ユーザーからも好評を博しており、現在では社内ITに加えて、人事・総務部門に対する問い合わせにも対応しているという。
また財務会計システムとSlackの連携も実現しており、財務会計システムを通じて行われた申請の承認を、Slackを通じて処理できる仕組みも実装した。これによって、承認者は時間や場所を問わず、普段使っているSlackの画面から気軽に承認を行えるようになり、申請から承認までにかかる平均時間を5.2時間から1.1時間にまで短縮できた。
加えて、トイレの空き状況をSlackに通知するbotも社内の有志が開発している。トイレにセンサーとWi-Fi接続デバイスを設置し、トイレに人が入ってるかどうかを検知し、その結果をSlack上にリアルタイムに表示するという仕組みだ。こうしたユニークな取り組みも含め、同社では現在、現場の技術者主導でデジタルレイバーのさまざまなサービスを試しているという。
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