NEC製AIが開発、“バブル崩壊味”のチョコレートを実際に食べてみた:エンプラこぼれ話(3/3 ページ)
「人類初の月面着陸」「オイルショックの混迷」「魅惑のバブル絶頂」「絶望のバブル崩壊」――NECが昭和や平成のさまざまな思い出を、AIを使ってチョコレートにした……とのことだが、何だか意味が分からない。試食できる機会があったので、実際に食べてみた。
「実際にチョコレートを制作してから味が練れるまで、ものによっては時間が必要です。例えば、『バブル崩壊味』の場合、その味の本質が全面的に分かるまでには、数カ月待った方がよいかもしれません」(伴野さん)
ある出来事の歴史的な意味が、すぐには明らかにならないように、チョコレートで表現されたそれぞれの「年」の味も、時間を置くことで初めて分かってくるのだという。
また、思わぬ形で新たな味を制作することになったダンデライオン・チョコレートでは、今回の開発をきっかけに、今までになかったアイデアを広げているという。
「実際にプロジェクトに挑戦してみると、10代から40代まで、さまざまなスタッフが記憶をシェアしながら作業するのは新鮮でした。また、創業者はもともとIT業界にいた人たちなので、本社からも『面白いじゃない!』と、食いつくような反応をもらえましたね。今回の経験を生かして、これから映画や音楽をチョコレートの味で再現するようなコラボレーションができるのではと考えています」(伴野さん)
「AIが人の創造性を引き出す」未来は来るのか?
一方で、NECの茂木さんは「まさに、その点が今回のプロジェクトで目指していた場所の一つ」と語る。
「普段、AIは『人の仕事を奪う』などと言われがちです。確かに、AIを使って人がやっていた仕事を代替することはある。しかし今回のプロジェクトでは、逆にAIが人の創造性を引き出すようなコラボレーションがしたかった。この方向性を守りながら、今後も新しいことを続けていきたいと考えています」(茂木さん)
IT企業が手掛けるAIと、チョコレート制作の専門家が本格的に手を組んだ今回のプロジェクト。試食会には、記者のようなテクノロジー系だけでなくグルメを専門にする記者も多く訪れていた。
ちなみに、伴野さんが「5種類の中でも一番の自信作」と語るのは「2017 イノベーションの夜明け味」。平成の終わりを表したとのことで、他の4つにはないスパイシーな香りと一緒に酸味と甘みが広がる、軽やかで刺激的な味だった。AIと味のコラボが増えていけば、将来は自分の好きな年をチョコレートにできる時代が来るかもしれない。ちなみに記者が生まれたのは1988年、ほぼ昭和最後の年だ。AIに作らせたら一体どんなチョコレートになるのだろう?
関連記事
- IBMの「Watson」が“作った”料理はうまいのか? 実際に食べてみた
IBMのスーパーコンピュータ「Watson」で未知のレシピを考案する「Chef Watson」アプリをご存じだろうか。Chef Watsonが提案したレシピで一流シェフが料理を作るというイベントがIBMで行われた。本当においしい料理になるのか、食べてみた。 - IoTを駆使した近未来型ジム「SIXPAD STATION」で地獄のトレーニングを体験してきた
30歳になり、最近おなか周りが気になってきた記者。「最新ITを駆使したトレーニングジムがある」と聞き、“仕事”と称して体験してきた。運動不足のたるんだ体は、地獄の15分トレーニングに耐えられるのか? - クレジットカードにもIoT化の波、SIM+ディスプレイ内蔵の超高性能クレカ「Wallet Card」に驚いた
SIM内蔵の「IoTクレジットカード」がいよいよ日本にやってくる。記者も実際に触ってみたが、ガジェット好きにはワクワクするようなアイテムになりそうだ。すでに興味を示している金融機関もあるとのことで、2019年中に登場する可能性もあるという。 - スマホで使える競馬予測AI「SIVA」、その的中率はどれくらい?
初開催となった「AI・業務自動化展」で展示されていた競馬予測AI「SIVA」。これを使えば、競馬素人でも一山当てられる……のだろうか。 - 人間よりも精度が高い「ダイヤモンド鑑定AI」 その仕組みとは
宝飾品店チェーンを展開するケイ・ウノが、人工知能が鑑定したというダイヤモンドを発売した。人間よりも高い精度で鑑定を行えるのだという。最近では、プロの判断基準を教師データにすることで、数値化しにくい問題に取り組む事例が増えてきている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.