“自前主義”から脱却し、社会に貢献する技術を――NEC社長が語る「強化分野」とは?:C&Cユーザーフォーラム&iEXPO 2018
NECのイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2018」に登壇した新野隆CEOは、顔認証やAI、スマート化といった技術を使った社会貢献の事例を紹介しつつ、次世代を見据えた「共創」の重要性を取り上げた。
2018年11月8日、NECの新野隆CEOは、同社のイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2018(11月8〜9日まで、東京国際フォーラムで開催)」の基調講演に登壇し、社会貢献を重視した技術運用や共創を進める方針を示した。
同氏は、「Digital Inclusion―デジタルのチカラで、ひとりひとりが輝く社会へ―」と題した講演で、NECが注力する技術やコンセプトを紹介。実際に社会でどのような形で“価値”を発揮しているか、具体的な事例を挙げながら進めた。
新野氏が「特に注力している分野」と語ったのは、IoT(モノのインターネット)に代表されるモノやサービスのスマート化、人工知能(AI)、生体認証、そしてサイバーセキュリティだ。
ただ「新しい」ものではなく、社会のニーズに合わせて最適化した技術を
スマート化については、インドのアーメダバード市で高速バス(BRT:Bus Rapid Transit)の運転状況をコントロールセンターから可視化し、乗客向けの電子掲示板を配備することで、乗客数や売り上げを従来よりも向上させた事例を紹介した。
また、生体認証の事例では、同社の顔認証を正式採用した2020東京オリンピック・パラリンピック大会の組織委員会から、チーフ・セキュリティ・オフィサーを務める米村敏朗氏が登壇。「東京中に分散した会場で、30万人もの大会関係者のゲート認証を、スムーズかつ正確に行うセキュリティ対策は、非常に重要な役割を果たすだろう」と語った。
AIの分野では、「Black Box」と「White Box」という、2つのコンセプトを紹介。前者はスピードと効率を重視する一方、「AIがなぜその判断を下したか」という過程を見せない、いわゆる“Black Box”の形で提供し、反対に後者はその過程を見せる“White Box”として、例えば商品の開発といったクリエイティブな分野で人をサポートするという。
新野氏はサイバーセキュリティについても、「既にある製品やサービスにいちいちセキュリティ対策を付け加えるのではなく、あらかじめその内部にセキュリティを組み込むことで、社会の安全を担保する」と語るなど、今回の基調講演では、技術そのものの新しさよりも、その便利さや適応範囲を社会のニーズに最適化する方向性を打ち出していた。
必要なら自社技術を提供しても進める他社との「共創」の中身は?
同氏が強調したもう一つの点は、外部との「共創」の強化だ。2018年6月には、ベンチャーのインキュベーションに特化した新会社「NEC X」をシリコンバレーに設立し、必要に応じて自社の研究所から他社に技術提供も行う姿勢を見せる。
「新事業構想の段階で、大企業が他社に技術を提供する例はユニークだと聞いている。しかし、今は製品づくりの全てを自社の技術や人で行っていた『自前主義』から脱却し、外部から生まれてくる新たな技術やアイデアを柔軟に生かすべき時だ」(新野氏)
従来の技術を生かした事業を全世界で進める一方で、同社は他社との柔軟な取り組みに乗り出している。例えば、自社のAI「NEC the WISE」とチョコレート専門店がコラボした「あの頃はCHOCOLATE」といったプロジェクトもその一つだろう。現実的な視点から社会に貢献できる技術を追求し、一方で新しい可能性にも目を向ける――そんな姿勢を見せるNECの今後の展開に注目だ。
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