なぜ今、IBMの傘下に入るのか――Red HatのCEOが語った買収劇の背景:Weekly Memo(1/2 ページ)
業界関係者に大きな衝撃をもたらしたIBMのRed Hat買収。先週、その両CEOが相次いで来日し、自社イベントでの講演や記者会見に臨んだ。今回の動きについて、両CEOは何を語ったのか。
「大きな投資」とだけ語ったIBMのロメッティCEO
「組み合わせといい、金額の大きさといい、この買収には驚いた」――。米IBMが10月28日(米国時間)にソフトウェアベンダー大手の米Red Hatを総額340億ドル(約3兆8000億円)で買収すると発表した後、複数の大手ITベンダーの首脳や幹部に感想を聞いてみたところ、異口同音にこんな第一声が返ってきた。
両社の発表によると、今回の買収によって「クラウド業界を一変させ、世界一のハイブリッドクラウドプロバイダーになる」ことを掲げ、「クラウドへのオープンなアプローチを提供し、過去に類を見ないセキュリティと可搬性をマルチクラウド環境全体で実現する」としている。買収は当局の承認手続きを経て2019年下半期に完了する見通しだ。発表内容については、関連記事をご覧いただきたい。
今回、本コラムでこの話を取り上げたのは、くしくも先週、両社のCEOが相次いで来日し、自社イベントで講演や記者会見を行ったからだ。両CEOは果たして、今回の動きについて何を語ったのか。
まずは、IBMのジニー・ロメッティ会長・社長兼CEO。日本IBMが11月7日、都内ホテルで開いた経営者向けイベント「Think Leadership」で講演を行った。
その前にあいさつした日本IBMのエリー・キーナン社長が今回の動きに触れ、「IBMのRed Hat買収は当社の歴史上、最大規模のM&A(合併・買収)となった。IT業界としても近年まれにみる大きな買収となった」と事実だけを紹介した。
そして、キーナン氏に紹介されて登壇したロメッティ氏は講演の冒頭、「今日は皆さんに、IBMが日本への投資をますます強化することをお伝えしたい」と述べた後、「エリーが今、お話ししたように、先日、Red Hatの買収という大きな投資を発表した。私たちがなぜ、積極的な投資を続けているのか」と語り始めたので、何らかのコメントが聞けると期待した。だが、買収の件は投資強化の象徴として一言取り上げただけで、日本でのデータセンター設備の増強に話が移ってしまった。結局、ロメッティ氏がRed Hatの買収について触れたのは、これだけだった。
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