ファイル消失、サポート延長、VDI発表――Windows 10激動の1カ月を詳しく解説:横河レンタ・リースの「Win10運用マスターへの道」(9)(3/3 ページ)
ここ1カ月ほど、Windows 10の運用に大きく影響する事件や、Microsoftからの発表が立て続けにありました。そこで今回は番外編とし、今のWindows 10を取り巻く状況について、詳しく解説していきます。
言ってしまえば、VDIは「デバイスは何でもいいから、単にデスクトップ画面を映し出す」というソリューションです。Windows 10の性能を引き出すには、Windows 10向けに作られたデバイス(ネイティブなデバイス)が最適なのは言うまでもありません。OS(ソフトウェア)とデバイス(ハードウェア)がネイティブな関係でなければ、使いやすいものになるわけがないのです。「VDIを推奨しない」というのは、OSのメーカーとしてごく自然なスタンスといえるでしょう。
では、WVDのリリースは、Microsoftの考え方が変わったということでしょうか。もちろんそうではありません。
同社はこのWVDを「Windows 7の無料の拡張セキュリティアップデートを提供する、唯一のサービスになる」と発表しています。つまり、どうしてもWindows 7のアプリケーションを残さざるを得ない顧客に対し、安全にWindows 7を使い続ける方法を提供したということでしょう。自社のクラウド上で、という制限はありますが。
基本的には、最新のOSとデバイスで、Office 365などのモダンなアプリケーションを活用してもらいつつ、どうしても、Windows 7のアプリケーションを使わざるを得ない場面だけ、WVDを使ってもらうというのが、Microsoftが考える“理想”のユースケースなのでしょう。ESUも用意するが、Windows 7を使うならWVDにしてもらいたい……そんな思惑が浮かび上がってきます。
新たな選択肢「30カ月サポート」誕生
そして、ESUの発表とともにもう一つ重大な発表があったことも見逃せません。今後、9月(秋)にリリースしたバージョンについては、Enterprise、Educationで、最大30カ月の長期サポートが提供されることになりました。
今までは、長期サポートというと、組み込み機器など特殊用途での利用を前提とし、最大10年のサポートが得られる「LTSC(Long Term Servicing Channel)」という極端な選択肢しかありませんでした。そこに2年半(30カ月)という、ある意味“ほど良い”選択肢が出てきたわけです。
しかし、ここで1つ疑問が残ります。仮に9月版を30カ月使ったとして、サポートが終わるのは3月になります。そうすると、30カ月サポートが使える次のバージョンが登場する9月までは、どうすればいいのでしょうか。アップデートの負荷を減らすなら、そのまま次の9月バージョンまで待って、それを適用したいところです。
これまでも、バージョンを1つスキップしてアップデートの運用負荷を減らしたいというニーズはありました。日本マイクロソフトにも問い合わせましたが、明確にバージョンスキップをサポートするという情報はないそうです。
私ども横河レンタ・リースが検証する限りでは、Windows Updateを使ったバージョンスキップのアップデートは、バージョン1607ではできませんでしたが、1803ではできるようになっていました。アプリケーションベンダーが対応できるのかという問題は残りますが、それは今後に期待しましょう。
さて、少し横道にそれてしまいましたが、次回は予定通り、パイロット運用の具体的な方法について書きたいと思います。Microsoftからさらに重大な発表が出てこなければ、ですが……。
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