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インタビュー

ブランド戦略から“炎上”対策まで――ホンダが広報にAI導入、その効果は?(1/2 ページ)

SNSや口コミサイトなどのWeb上の情報やマスメディアの情報から、消費者の声を拾い、AIが約1300種類に分類する――日立製作所が発表した「感性分析サービス」は、もともと本田技研工業の広報が抱えていた課題を解決するために開発されたものだった。

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 インターネットの普及とともに、広報の仕事は厳しさを増しているといえるだろう。人々が企業に対して持つイメージや、企業活動に対する反応などを知ろうと思った場合、ひと昔前であれば、新聞やテレビ、ラジオといったマスメディアの情報をチェックしたり、アンケートや対面でのインタビューを行ったりという方法しかなかった。

 それが今では、個人ブログやSNSなど、消費者の声を拾うチャネルが大きく広がり、情報の量が増えるとともにスピードも格段に増している。大きな企業であればあるほど、膨大な情報を人力で全て確認しようとしても、ほぼ不可能に近い状況だ。この状況は企業にとってリスクでもあり、チャンスでもある。

 自動車メーカー大手の本田技研工業(ホンダ)は、そんな消費者の声を生かしたいと考えていたという。「イベント出展やプレスリリース、決算といった発表の後に、自社で定めたKPIに基づき、状況を推し量るための特定の表現が露出しているかどうか、といった程度の情報しか調べられていなかった」(同社広報)とのことで、そのデータがまとまるのも、発表の翌日というスピード感だったそうだ。

photo 本田技研工業
photo 本田技研工業 IT本部 ITイノベーション推進部 主任 坂本大輔さん

 予期せぬ“炎上”などのリスクもある中、Web上にある消費者の声を十分に拾えていないのは、リスク管理上問題がある――そう考えた同社の広報部は、その対策をIT部門に依頼。SIerの力も借りながら、SNSなども含めた消費者の声を拾い、分析するシステムのプロトタイプを作り、広報部で使っていたものの、実運用には問題も多かった。

 「社員全員に対してシステムを開放したいというニーズがあったのですが、データの増加に耐えられる設計になっていませんでした。またUIにも難があり、多くの人が簡単に使えるものではなかったのです」(本田技研工業 IT本部 ITイノベーション推進部 主任 坂本大輔さん)

 そこで坂本さんたちは、システムの全社展開に向け、クラウド化を前提として新たにシステムを作り直すことを決意。4社ほどから提案があったが、技術力の高さなどが決め手となり、日立製作所と開発を進めることを決めた。

 契約などを終え、開発が始まったのは2017年7月から。詳細な要件定義書などを作らず、週に1〜2回の打ち合わせを繰り返しながら、アジャイルで開発を進めていった。テストについては、広報部に全面的に協力してもらったという。

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