ブランド戦略から“炎上”対策まで――ホンダが広報にAI導入、その効果は?(2/2 ページ)
SNSや口コミサイトなどのWeb上の情報やマスメディアの情報から、消費者の声を拾い、AIが約1300種類に分類する――日立製作所が発表した「感性分析サービス」は、もともと本田技研工業の広報が抱えていた課題を解決するために開発されたものだった。
消費者の声を「1300種類」の項目で分析
新たなシステムで注力したのは、高精度な“感性”の分析だ。徳島大学発のベンチャー企業である、言語理解研究所(ILU)の感性分析AI「ABスクエア」を使い、テキストトデータを話題、感情、意図に合わせて約1300種類の項目に当てはめる分析を行える。特に感情については「好意的」「中立」「悪意的」の3つに分類した上で、文意を考慮し、「満足」「落胆」といった81種類の中から特定するという。
メンテナンス性の高さも特徴だ。SNSなどでは、頻繁に新しい言葉が登場する可能性があるために、類義語や同義語の更新が欠かせないが、それを人力で行うのは現実的ではない。そこで、新システムでは機械学習を用い、絞り込みに使う辞書を自動更新する機能を備えた。
「Webクローラーで収集したデータから関連性の高い単語や、専門用語を機械学習で覚えさせていくことで、辞書のメンテナンスを自動化するとともに、絞り込みの精度を高めることが狙いです。ILUには既に数十種類の業種特化型のデータベースがあり、最初から高い精度を期待できるのも特徴です」(日立製作所 サービスソリューション本部 西脇康人さん)
分析結果を表示するビュワーは、業務部門でも扱いやすいようUIを工夫し、検索機能を充実させた。ネガティブワードが増えた際に自動でアラートが出るなど、リスク対策ツールとしても使えるという。
コールセンターに届く声やメールに込められた思いも分析できないか?
システムが完成したのは2018年3月。翌4月からは広報部が利用を開始した。新車発表やフォーミュラ1、CES(Consumer Electronics Show)といったイベント時の情報露出に対し、消費者のイメージや感情を車種別やトピック別などに可視化しており、レポートを作成する時間が短くなるなど、一定の効果が得られたそうだ。
「以前のシステムに比べ、欲しい情報にたどり着くスピードがはるかに速くなりました。ストレスなく操作できるので、日々グラフを確認するだけでも知見がたまりますし、他社の情報も分析できるので、競合他社との比較もできます。今はメディア露出の反響を確認することしかできていませんが、将来的には狙った反応が引き出せるような、ブランド戦略に生かせればと考えています」(坂本さん)
その後、日立製作所は本システムをベースに「感性分析サービス」を発表した。ホンダ側としては、多くのユーザーが使うことでシステムが改善されればいいと考えているという。
「ユースケースが増え、新たな使い方などが見えてくることを期待しています。ホンダでも、このシステムを全社員が使えるようにしていますし、今後はコールセンターの音声やメールなどのデータでも、同じようなことができないかを検討しているところです」(坂本さん)
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