本気の働き方改革は、“若手の本音”から始まる――企業を超えた「ミレニアルプロジェクト」を日本マイクロソフトが始めた理由:「ツールではなく、企業のマインドを変えていきたい」(2/2 ページ)
日本マイクロソフトは、社内の「ミレニアル世代」を対象に、働き方やITツールについてのアイデアや本音を引き出すディスカッション型プロジェクト「ミレニアルプロジェクト」を開始した。他社にも広がり始めたその内容とは?
日本マイクロソフトは、2020年までの注力分野の一つに、ミレニアル世代を中心とした働き方改革を掲げている。同プロジェクトは、執行役員の発案を中心にいわゆる“トップダウン”で始まったというが、その背景には、これからのビジネスを見据えた戦略がある。
「このプロジェクトは、将来への投資という狙いが大きい。若手の自由な発想を次のイノベーションに生かし、その結果として、会社の将来を担う人材にとって魅力的な働き方も実現したいと考えている。
また、今の若手が成長し、企業の中で意思決定を担うようになる将来のビジネスを見据えてもいる。彼らは、さまざまな企業のツールに触れながら育った世代だ。だからこそ、その視点やニーズは上の世代のそれとは全く違うと感じている。将来、彼らのニーズに合った製品を生み出すためにも、彼らが今の仕事やITについて率直に何を考えているのか知り、新しい発想を生かせる仕組みを今から作っておきたい」(石田氏)
プロジェクトを“継続”することで見えてくるもの
同プロジェクトは、「Microsoft Teams」の掲示板などを活用し、営業部門やマーケティング部門を中心に徐々に参加者を増やしてきた。現在は、「MINDS」に参加予定の企業から数人のミレニアル世代の社員同士が交流し、将来の働き方について話し合う活動も始まっている。
手探り状態で成長を続けるプロジェクトにとって、目下の課題の一つは、「できる限り若手が自由にアイデアを出せるような環境を保つ一方、必要に応じて議論の軌道を導き、明確なアウトプットを出せるような仕組みをどう作るか」だという。
例えば、ミレニアルプロジェクトの場合は、その場の意見をまとめる「リーダー」の社員が全体の状況を把握し、必要に応じてミレニアル世代の中でも経験が長い“保護者役”の社員が、「明確なアウトプットをあくまで現場のアイデアを制限しないように注意しつつ、若手の経験を補うような形で自然に助け舟を出すようにしている」(石田氏)
また、自然なアイデアや議論を促進するからこそ、多様な意見を形にする困難さも付きまとう。
「ひとくちに『ミレニアル世代』と言っても、その範囲は広く、考えていることはそれぞれ違う。次々と出てくる多様な意見をどうやってまとめていくか、という点で難しさを感じることもある。例えば、『チャットツールを業務に活用すれば、効率が上がる』と言うミレニアル世代は多いが、本当に効率が上がるか見極めるには、効果測定が必要だ。若手が求めるアイデアをいかに上に認めてもらいつつ、納得できる形で実現できるかこれからも追求していきたい
また、他社のミレニアル世代と交流してみると、これが自社だけの問題ではなく、多くの日本企業に共通する問題だということが分かってきた。『MINDS』の活動が本格化すれば、日本の働き方改革全体に向けた提言にもつなげられるかもしれない」(山本氏)
新たな世代の台頭を見据えて始まったミレニアルプロジェクトは、「ビジネスにITは不可欠」という状況の中で育ってきた世代の考え方をくみ取ることで、これから加速する世代やニーズの変化を柔軟に受け止め、企業の成長を加速させる可能性を秘めている。短期的な投資対効果や“今すぐ実現できるアイデア”は期待はできないだろう。しかし、今後新たなディスラプターが無数に出てくる業界で、部門に関係なく若手のアイデアや議論を積極的に引き出せる環境を作っておくという意味では、実は長い効果をもたらし得る“生き残り戦略”なのかもしれない。
関連記事
- 社員をしらけさせるから「働き方改革」は失敗する 三社三様の「社員をその気にさせる方法」とは
掛け声ばかりで誰も踊らない――。ITmedia エンタープライズ編集部が行ったパネルディスカッションで、「そんな働き方改革の失敗は『社員のしらけ』によるもの」という意見が出た。社員をしらけさせず、その気にさせるにはどうすればいいのか。 - いいことばかりではない? MSのテレワーク体験プログラムから見えてきた課題と解決策
日本マイクロソフトが推進する「ウーマン テレワーク 体験プログラム」、その成果はいかに。子育てとの両立を目指すプログラム参加や、テレワーク人材の確保に期待を寄せるプログラムパートナー企業の生の声を紹介する。また、見えてきた課題とは? - 「Microsoft 365」で大企業とベンチャーをつなぐ 三井不動産の新プロジェクトとは?
三井不動産の大企業向けビジネス共創支援プログラムに、日本マイクロソフトが「Microsoft 365」を提供すると発表した。企業内起業家(イントレプレナー)の支援に活用するとのことだが、どのような使い方をするのだろうか。 - 業務は「サービスの標準機能に合わせて」シンプルに クラウドで変わる業務改革の常識
その固有業務は本当に必要なのか――。クラウドサービスの普及で、これまでの常識が変わりつつあるようだ。この問題を考える格好の発表会見が先週あったので、今回はこの話題を取り上げたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.