Red HatがIBMを乗っ取る!?:Mostly Harmless
巨大企業IBMがRed Hatを買収したわけですが、実は助けを必要としているのはIBMのほう……?
この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。
IBMによるRed Hat買収の背景について、いろいろな解説記事が出てきていますが、面白かったのはこれです。
「take over」には「乗っ取る・引き継ぐ」という意味がありますが、この場合は「乗っ取る」という意味で使っているように思います。ちょっと信じ難い視点ではありますが、よく考えてみると、それなりの理由はありそうです。
著者のロバート X. クリンガリーという人は有名なようですが、検索しても日本語のサイトでは見つからず、日本ではあまり知られていないようです(私も知りませんでした)。この記事の後半には、さらにすごいことが書かれています。
I do see Whitehurst as CEO of IBM in six months or less.
ホワイトハースト(Red Hatの現CEO)が6カ月以内にIBMのCEOになるだろう
巨大企業IBMがRed Hatを買収したわけですが、助けを必要としているのはIBMのほうで、これからのやり方はRed Hatに合わせた方がいい――ということなのではないでしょうか。小が大をのみ込む、あるいはのみ込まれた小が大を支配する、ということですね。
IBMがクラウド企業になるためには「CEOの交代」が必要?
そもそも、IBMはかなり昔にハードウェアメーカーとしての立場を捨てたはずでした。ガースナーの時代に「ソリューション」に舵を切り、その後もコンサルタント会社のPwCを買収するなど、脱ハードウェアを指向してきました。早くからOSS(Linux)に関わったのも、その一環といっていいでしょう。今では大型汎用サーバの売り上げは全体の1割程度になっているようですが、Watsonの立ち上がりは鈍く、クラウドへの取り組みも遅れたという印象は否めません。
IBMはこのところ、売り上げが下落傾向にあり、Microsoftが復活し、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が好調な中で厳しい状況が続いています。いよいよ“事業構造を根本的に変革しなければならないところまで追い詰められた”ということではないでしょうか。
冒頭の記事でクリンガリー氏は、IBMを救うためにRed Hatを買収するというのは正しい選択だと書いており、「買収後にはRed Hatの文化がIBMを支配すべき」と書いています。これまでのやり方が悪くて追い詰められた以上、やり方を変えるべきで、そのためには「ホワイトハーストがIBMのCEOになるべき」ということなのでしょう。
買われる側にも事情が
買収というのは、買う側に理由があるのはもちろんですが、買われる側にもそれなりの事情がないと成立しません。Red Hatはこれまで順調に業績を伸ばしてきていますし、キャッシュフローにも問題はないようですが、このところ株価はパッとしません。Red Hatとしても、“飛躍のための何か”が必要な時期であったことは間違いないでしょう。
2018年11月17日、@ITに、
という記事が掲載されました。この中でホワイトハースト氏は以下のように話しています。
今後5年間で、企業は自社の業務アプリケーションをクラウドネイティブに移行する取り組みの過程で、幾つかのアーキテクチャ的な決断を行う。当社の営業担当者1000人、サービス担当者2000〜3000人といった規模では、(こうした決断について)十分な影響力を発揮できない。数万人の営業担当者、数十万人のサービス担当者を擁するIBMの一部となることで、当社は現在の活動を飛躍的に拡大できる。
今後5年間で起こるデジタルトランスフォーメーションにおいて主導権を握るために、IBMの営業力が必要だった――ということです。ただ、それはIBMだけでも実現はできず、両社が一体になって初めて可能だとも言っています。
企業をクラウドネイティブな環境へと移行させる取り組みには、クラウドネイティブな発想が必要です。そのとき、IBM生え抜きの元SEであるロメッティCEO以下、IBMの経営陣は正しい方向性を示せるのでしょうか。それを考えると、ホワイトハースト氏がCEOになる、という予想はそれほど荒唐無稽な話でもないのかもしれません。さて、どうなることでしょうか。
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