なぜ、金融機関がこぞって「営業支援サービス」を使い始めたのか:Weekly Memo(1/2 ページ)
セールスフォース・ドットコムの営業支援を中心としたクラウドサービスが、ここにきて金融機関で普及しつつある。金融機関にとって、この動きはいったい何を意味するのか。
重要な差別化戦略になり得る顧客接点の拡充
「この2年ほどで、金融機関のお客さまに私どものサービスをお使いいただくことがグッと増えた」――。セールスフォース・ドットコムの田村英則 常務執行役員エンタープライズ金融営業本部長は、同社が12月13日に開いた金融業界に対する取り組みについての記者説明会でこう語った。この動き、金融業界でいったい何が起きているのか――。今回はこの素朴な疑問をひもといて考察してみたい。
まず、金融業界を取り巻く状況について、田村氏は「利用者はデジタル技術の普及に伴ってさまざまな情報を手軽に入手できるようになり、ライフスタイルも多様化してきた。一方、金融業界はそうした利用者への対応とともに、異業種からの新規参入や行政規制、働き方改革、グローバル化などへの対処が求められている」との見方を示し、そうした状況下での金融サービスの課題について図1を示しながら次のように説明した。
「金融機関のシステムは、もともと商品別、あるいは営業店ごとに顧客情報がひも付いている。図は、一番下の基幹システムから一番上の顧客情報までの間に存在する要素を記したものだが、これらによって顧客情報を素早く有効に活用することが難しくなっている。これからは、顧客接点の拡充が重要な差別化戦略になり得る中で、人員を増やさないで業務の生産性を向上し、顧客をしっかりと獲得していくにはどうすればよいのか、が問われている」
そうした課題に対し、セールスフォースが現在提供している総合サービスが、「Customer Success Platform」である。図2がそのサービスの要素を示したもので、もともとは社名の由来である営業支援(SFA:Sales Force Automation)からスタートし、顧客接点に必要な要素を増やしていった格好だ。さらに2018年からこれらの要素をさらに深く連携させてデジタル変革につなげようという「Customer 360」と呼ぶサービスも提供している。
田村氏は、「私どもが提供しているサービスは、まさに金融サービスの課題を解消するためのもの。さらに、クラウドによるスピード感や柔軟性、拡張性、そして人工知能(AI)やモバイル対応、パーソナライゼーションといった最新技術を利用していただけることが、ここにきて金融機関のお客さまの注目を集める要因になっている」と手応えを感じている様子だ。
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