今なお続く福島の「除染」 “ドローン×AI”で除去物管理の自動化に挑む企業(2/2 ページ)
東日本大震災から8年が過ぎようとしているが、原子力発電所の事故で生まれた放射性物質の「除染」は今なお続いている。除染で生まれた膨大な土壌の管理は、非常に労力のかかる作業だが、それをドローンとディープラーニングで効率化した企業がある。
破損の検出も「ディープラーニング」で自動化
いくら画像で確認できるとはいえ、PC上で画像を拡大し、約1万平方メートルもあるシートの中から一円玉程度の破れを見つけるのは時間も労力もかかる作業だ。当時は1カ月当たり50個程度のシートに対して2〜3人のオペレーターで作業しており、エアロセンス取締役COO(最高執行責任者)の嶋田悟氏は「作業が終わるまで、1人当たり数時間はかかっていたのではないか。1年近くやっていたが、日常的な業務としては負荷が高かった」と振り返る。
そこで同社は、ドローン点検の開発と並行して、シートの損傷場所を機械学習で検知するための学習データを集め始めた。オペレーターが探し出した破損場所の画像を正解データとし約1000枚を収集。同社 ソフトウェアアーキテクトの菱沼倫彦氏によると「正解データの数を増やすために、1つの画像を回転させたものを加えるなどして、数を稼いだ」という。
一方、不正解データは約1万枚を用意した。データの準備ができた2017年8月にTensorFlow(Googleがオープンソースで公開している機械学習のソフトウェアライブラリ)を使って検出アルゴリズムの開発をスタート。画像処理に適したアルゴリズムの「Convolutional Neural Network(CNN:畳み込みニューラルネットワーク)」を利用し、1週間程度で予測モデルの構築は終わったそうだ。それから3カ月後の2017年11月には、破損場所の検知機能をリリースした。
今回開発したシステムでは、AIが破損場所の候補を出してくれるものの、最後は人間の確認作業を入れる形にしたという。破損場所を見逃してしまうことが最大のリスクであるためだ。
「この予測モデルでは『破損場所を見逃す』可能性を減らすため、破損判定の基準を緩めにしました。誤検知(偽陽性)の確率は約10%程度です。オペレーターはAIが出した候補から本当に損傷しているものを選べばいい。確認作業を補助し、効率化できたことが大きな効果だと考えています」(菱沼氏)
システムを導入した結果、オペレーターの作業時間は以前と比べて約60%短縮できたという。技術的には、南相馬市以外の仮置き場でも展開できる可能性はあるものの、担当している業者によって、シートの色が違ったり、仮置き場の工法自体が異なったりするため、再度予測モデルの構築を行う必要があるようだ。
今後は、ドローンとエアロボマーカーを利用した「基準点測量」にも注力するという。菱沼氏は「将来的にはドローンとマーカー、クラウドを活用して、さまざまな産業用ソリューションの自動化を目指したいですね」と今後の展望を述べた。
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