海外ピッチコンテストを席巻! 「声で感情を丸裸にする」技術の使い道って?――Empath CSO 山崎はずむさん(前編):長谷川秀樹のIT酒場放浪記(1/3 ページ)
メルカリのCIOを務める長谷川秀樹氏が、志高きゲームチェンジャーと酒を酌み交わしながら語り合う本対談。今回のゲストは、音声感情解析技術で海外ピッチコンテストを席巻している「Empath」の共同創設者、山崎はずむさんです。
元ハンズラボCEOで現在、メルカリのCIO(最高情報責任者)を務める長谷川秀樹氏が、志高きゲームチェンジャーと酒を酌み交わしながら語り合う本対談。今回のゲストは音声感情解析技術「Empath」を携えて数々の海外ピッチコンテストに出場、2018年は8回優勝、総額1千万円を超える賞金をゲットしたというEmpathの共同創業者・CSO(最高戦略責任者)の山崎はずむさんです。
同社にジョインするまでは大学で哲学の研究をしていたという異色の経歴をお持ちの山崎さんは、なぜスタートアップに身を投じたのか、Empathにはどんな魅力があるのか、長谷川さんがじっくりと迫ります。
前編で語られるのは、会話の音声から話者の感情を判定するというユニークな技術の仕組みと、国内外でのビジネス展開の可能性について。実際にEmpathが動作するところも見せてもらい、長谷川さんの感情が赤裸々になる一幕も……!?
目次
音声から人の感情を可視化するAIが生まれたきっかけ
長谷川: 創業以来、Empath一本でやっているんですか?
山崎: はい。音声から感情を解析するテクノロジーだけに、完全にフォーカスしています。
長谷川: どのような技術なんでしょう?
山崎: Empathは人間の感情を音声から解析する人工知能です。何をしゃべっているかという内容は全くみないで、どういう話し方をしているか、例えばスピードや抑揚などから、機械学習をベースに感情をリアルタイムで推定するんです。
長谷川: AIって教師データがあって、「これはこういう感情」と教え込みながらやるものなんだと思いますが、具体的にはどうやっているんですか?
山崎: どうラベルを貼るのかという問題ですね。例えば猫の画像を出せば「猫」という回答が決まるのに対して、感情というのはそんなに一義的に決まるものではないのでは? という疑問が出てくると思います。それはその通りで、ではどうしているのかと言うと、集めてきた音声データを十数名程度の評価者に聞かせて、どんな感情であるかを判断してもらうんです。その上で回答が一致したものだけを教師データにしていきます。複数人の回答が一致する音声は感情の特徴が得やすいのだろう、という考え方でこのような方法を取っています。
長谷川: 感情は何種類くらいあるんですか?
山崎: 喜び、平常、怒り、悲しみという4つの感情と、これらを統合して作る「元気度」という値が可視化されます。
長谷川: どういうきっかけで、そういうものを作ろうと?
山崎: もともとは、僕らの親会社のスマートメディカルというスタートアップで生まれたアイデアです。医療現場を支援するプラットフォーム開発をしている会社ですが、インタフェース系のテクノロジーで何か新しいものを作ろうというテーマがあり、当時は被災地のボランティアが鬱になってしまうことが課題になっていたので、ボランティアのメンタル面の問題を検知するものができないかというところから発想されたんです。
NTTドコモさんの東北復興新生支援室と一緒にボランティアさん向けに提供しまして、不調が検知された場合は医師への面談を勧告するなど、メンタルケアに活用してもらいました。
長谷川: 今は別の会社になっているんですか?
山崎: そうです。今の会社のCEOがスマートメディカルにいた時代に外部の研究者と一緒に開発を始め、そこに僕が参画したのが2015年。完全に独立して別会社になったのが2017年10月です。
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