SIerからユーザー企業へ いよいよ始まった“IT人材の大移動”はDX推進の起爆剤となるか?:Mostly Harmless(1/2 ページ)
日本のITベンダーがリストラを余儀なくされている一方で、ユーザー企業がIT人材を抱え込むようになり、人材争奪戦が過熱しはじめたようです。この流れで、“2025年の崖”が迫りくる日本企業のDXは進展するのでしょうか?
この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。
国内のIT(情報技術)サービス大手のリストラが続いているということです。
これは、日本のITベンダーはクラウドへの取り組みの遅れでGAFA(Google、Amazon.com、Facebook、Apple)に先手を取られ、リストラを余儀なくされているという記事です。私が注目したのは、この記事の最後の部分でした。
さらに足元では新たな問題が浮上。自動運転技術に取り組む自動車やネット業界などの顧客企業が自社でIT人材を抱え込むようになっている。経済産業省の調査によると先端IT人材は20年に約5万人不足する。LINEは人工知能(AI)の技術者を年収1000万〜2000万円程度で処遇するなど、人材争奪戦が激しくなっている。
SIerが人員を削減し、ユーザー企業がIT人材を抱え込む――。これは、これからはシステム構築の主役がITベンダーからユーザー企業へ移行していくということを示しているのかもしれません。
単に「リストラであぶれた人材の受け皿」になっているということではなく、日本社会のIT化を支えてきた「SIerがユーザー企業の面倒を見る」という体制が変わりつつあるということなのではないでしょうか。
日本ではSIerにIT人材が偏在
そもそも日本では、IT人材の75%がSIerなどのITベンダーに所属しており、「ITベンダーがユーザー企業のシステム構築や運用を請け負う」という構図になっています。
しかし米国では、IT人材の72%がユーザー企業に所属し、自社システムの構築・運用を行っているということなので、構造が“真逆”といってよい状況にあります。
そしてこの構図が、「業務の自動化と丸投げ」「人月での受託開発」「SE単価の低迷」につながっているとしています。日経コンピュータの木村岳史氏(リンク先は会員限定記事です)は、こういった構図を批判する急先鋒ですが、一方でこのように長く続いている仕組みには、それなりのよい点も必ずあります。ITの素人が多い中小企業などがシステムを導入し、運用することができたのは、こういったSIerの存在が寄与していることもまた、事実でしょう。
しかし、事態はそんなことをいっていられないほど差し迫っているようです。
「基幹系システムの構築を担えるITエンジニアが急速に減っている」のだそうです。
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