SIerからユーザー企業へ いよいよ始まった“IT人材の大移動”はDX推進の起爆剤となるか?:Mostly Harmless(2/2 ページ)
日本のITベンダーがリストラを余儀なくされている一方で、ユーザー企業がIT人材を抱え込むようになり、人材争奪戦が過熱しはじめたようです。この流れで、“2025年の崖”が迫りくる日本企業のDXは進展するのでしょうか?
基幹系システムを「刷新したくても、できなく」なる?
それは、「基幹系システムの構築は多くの企業が実施済みで、もはや刷新需要しかない。ならば新しい分野であるDXやAIなどに人員をシフトしよう」ということから、「ITベンダーは今、デジタル変革(DX)などの新分野や、AI(人工知能)などの新技術へ対応するための人員を急激に増やしている」からだといいます。要点を簡単にまとめると、
- 基幹系システムの構築は多くの企業が実施済みで、もはや刷新需要しかない
- 基幹系を担うITエンジニアが高齢化している
- ITベンダーは新規分野に人員を充当しており、以前からある基幹系システムを手掛ける部門になかなか若手を投入しない
- 若手ITエンジニアにとっても、技術的なイノベーションの少ない基幹系システムの構築は、魅力的ではない
- 基幹系システムの構築を習得するのは難易度が高く、時間がかかる
ということです。なるほどこれでは基幹系エンジニアは減る一方でしょう(ただし、DXって基幹系も含む話なんじゃないかと思うのですが……)。
しかし、記事でも、「だが、どのようにDXが進んだとしても、企業から基幹系システムがなくなることはない」としており、結果として「今から5年後、DX推進のために基幹系システムを刷新したくても、刷新できないユーザー企業が増えそうだ」ということです。これは、ユーザー企業にとっては一大事です。
こうなると、ユーザー企業は自衛のためにも自社で基幹系エンジニアを育て、保持しなければなりません。人材を確保した上で、DXに取り組むという流れになるでしょう。
経産省も後押し
実はこの人材の移動を、2018年に「2025年の崖」を警告した経済産業省も後押ししています。崖を回避し、DXを実現する上でも人材の移動が重要になるというシナリオです。
この記事の図に、現在72:28とベンダーに偏っている人材の分布を、2025〜30年までに50:50に是正し、年収も今の2倍にするという目標が掲げられています。「2025年の崖」のレポートと同様、企業に注文を出す異例の内容ですが、
DXレポートで示した素案に関するユーザー企業やITベンダーとの意見交換を踏まえて案を作成。パブリックコメントには100件弱の意見が集まったという。
とあるように、業界の意見も反映しているようです。経産省の考えは、米国型の人材分布に移行し、ユーザー企業を活性化させることでDXを推進し、崖を回避するということなのでしょう。
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