初めての全社リモートワーク、めんどくさすぎる申請手続き、スマホの紛失対応――7人の情シスは、どうやってピンチを切り抜けたのか:俺たちの情シス 第12回 レポート(1/4 ページ)
初めてのリモートワークトライアル、スマホ紛失対応、めんどくさすぎる申請手続き、導入ツールが本当に生産性を高めているのか問題、社内相談の増加……。さまざまなピンチに情シスたちはどう対応したのでしょうか。
「俺たち情シスはピンチをチャンスに変えられたのか」――。ITmedia エンタープライズ編集部が2018年末に開催した情シス交流会「俺たちの情シス」では、こんなテーマのライトニングトークが展開されました。
初めてのリモートワークトライアル、スマホの紛失対応、めんどくさすぎる申請手続き、導入ツールが“本当に生産性を高めているのか”問題、社内相談の急増……。さまざまなピンチに情シスたちはどう対応したのでしょうか。「7人の情シス」のライトニングトークをご紹介しましょう!
3つのピンチに学ぶ、「働き方改革のために情シスができること」
LTのトップバッターを務めたのはレコチョクの情シス部門で働く藤川さん。「リモートワーク導入における『3つのピンチ』とその切り抜け方」をテーマに、自らの経験を約5分間のLTにまとめました。
同社では、政府が2018年7月23〜27日を「テレワーク・デイズ」とし、期間中に「2日以上のテレワーク実施」を呼び掛けたのに合わせて、「1日だけテレワークの実施を提案してみよう」と準備を始めたそうです。
ところが、それが最初のピンチの始まりだったと藤川さん。社内ITグループの業務範囲は、PC、携帯電話、スマートフォン、ネットワーク、サーバ、クラウドサービスなどといったIT関連であり、よくよく考えてみると働き方の制度に関する取り組みは業務範囲外です。
「『リモークワークのトライアル』という説明では、社内ITグループの担当範囲外とされてしまい、実施できなくなるかもしれないと考えた藤川さんは、「リモートワークで必要なシステムのトライアルを実施する」という名目で社内を説得することでピンチを切り抜けました。
2つ目のピンチは、テレワークの実施当日に必要となる「新しいチャットツールが社内に普及しなかった」ことでした。「Office 365」の「Teams」を導入したところ、使う人が全く増えなかったのです。
理由を探ってみたところ、「誰が使っているか分からないから」という声が多く、「みんなが使っていないと、せっかく送っても独り言みたいになってしまう」と懸念していることが分かりました。そこで藤川さんは、社員全員にTeamsを強制インストールし、さらに、『飲み会しようよ』『ランチ一緒に行こうよ』などといった、気軽なテーマでも活用できることを紹介、利用を促しました。
ただ、普及の一番の決め手となったのは、「スマートフォンで社外からでも利用でき、便利だとアピールしたこと」だったそうです。「スマートフォンで『Skype』を利用するのは意外と手間だし、メールも面倒なところがあります。それらに比べてビジネスチャットは、より気軽に使えて便利だと伝えたところ、『なるほど』と思ってもらえたようで、利用者が右肩上がりに増えました」(藤川さん)
3つ目のピンチは、「リモートワーク当日に社内システムにつながらなかった」という、重大かつ深刻なものでした。リモートワーク当日の朝に「ファイルサーバにつながりません」という連絡があり、調べてみたところシステムのリソース不足が判明したのです。同時アクセスの試験が十分にできていなかったことが原因でした。
「このピンチから、社内ITグループだけでなく、もっと社内の他のメンバーも巻き込んで準備すべきだったと痛感しました。最終的には、リモートワーク参加者に『オフィスに出社してください』と伝えることになりました」(藤川さん)。
最後に、藤川さんは、「『なぜIT部門がリモートワークを主導するのか』と問われたら、『システムの検証です』という説明が効く。新しいチャットツールが普及しないなら、業務外の用途から始めるのが良い。リモートで社内システムにつながらないときは、『諦める』ことも大切。業務継続を何よりも優先しましょう」と、LTをまとめました。
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