日本マイクロソフトがオープンする謎の施設? 「X(クロス)インテリジェンス・センター」が生まれた背景:工場や病院、店舗などの“現場”に特化(3/3 ページ)
日本マイクロソフトは2019年6月に、顧客企業向けの「X(クロス)インテリジェンス・センター」をオープンする。その内容について紹介した記者会見からは、現場のコミュニケーションが業務を大きく変える様子が見えてきた。
なぜ、「現場の最前線」のデジタル化が必要なのか
手島氏は、「(独立行政法人労働政策研究・研修機構によれば)日本における生産年齢人口は、2025年には7230万人に減少するが、そのうち約4000万人がファーストラインワーカーとみられる。これからも続く日本の生産年齢人口の減少は、ファーストラインワーカーの減少に直結する。
だが、インバウンド需要の拡大をはじめ、顧客接点の仕事は増加傾向にあり、運輸、流通、製造、建設、医療など、あらゆる業種でファーストラインワーカーの減少が大きな課題となってくる。その課題を解決するには、効率化だけでは限界がある。今までと違うことをやらなくてはならない」と指摘する。
例えば、同社は今回の会見で、設備保全作業のデジタル化を支援するシナリオをデモストレーションした。コーディングなしで開発したスマホアプリを使って、本部に対する報告をデジタル化した。本部では活動内容を一元管理し、故障箇所に関する情報や、ヒヤリハットに関する情報などの共有を可能にする。また、ERPとの連携により、業務効率の向上やタスクの見える化も実現した。
同社の調査によれば、実際に現場で働く従業員が抱える課題意識には、「現場での孤独感。仲間がいない」「現場に行かないと学習できないなど、効率的な学習や研修ができない」「紙ベースの作業が非常に多く、残業につながることも多い」「誰に聞いたらいいのか、どこを探したらいいのか分からず、不明点や疑問点の解決に時間がかかる」「シフトとタスクの調整や管理が難しい」「データやデバイスのセキュリティに対する意識が低い」などがあるという。
日本マイクロソフトでは、これに対して6つのシナリオを用意する。
- 本社や現場、現場同士のつながりを実現し、一体感を強化する「企業文化とコミュニティーの促進」
- 充実した社員教育により、提供するサービス品質を向上する「教育/研修とスキルアップ」
- 紙ベースの業務から脱却し、従来の業務プロセスを改革する「業務プロセスのデジタル化」、現場の知見とノウハウの共有と蓄積、適切な対応を即座に行える「リアルタイムな課題解決と現場知見の蓄積」
- 各社員のシフト調整や割り振るタスクの進捗を一括で把握する「シフト管理&タスク管理のデジタル化」
- 現場の機密情報を守り、デバイスを管理する「セキュリティリスクの低減」
それぞれについて、Microsoft 365や「Microsoft Azure」「Dynamics 365」、Surface Go、HoloLensなどを組み合わせたソリューションを提供したい考えを示す。
手島氏は「本社だけで情報を閉じたり、現場だけで情報を閉じたりということではなく、本社と現場が情報を共有することが重要だ。また、現場が業務に必要な柔軟性を獲得するためにはセキュリティが重要。日本マイクロソフトは、単一のデジタルプラットフォームでデータ、情報、アプリを活用できる環境を提供し、現場に力を与え、企業の価値向上を支援できる。それが、現場に顧客接点に貢献し、顧客のロイヤリティーを高めることになる」と、同社の優位性などを強調した。
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