クラウドサービスをやらないDellのクラウド事業とは:Weekly Memo(1/2 ページ)
「Dell Technologies Cloud」と呼ぶクラウドソリューションを発表したDell。まさに社名を冠にした戦略商品だが、これはクラウドサービスではない。クラウドサービスをやらないDellのクラウド事業とは――。
Dellがハイブリッドクラウドソリューションを推進
Dell Technologies(以下、Dell)の日本法人であるデルとEMCジャパンは先日、新クラウドソリューション「Dell Technologies Cloud」について記者説明会を開いた。同ソリューションは、Dellが2019年4月下旬に米国で開催した年次イベント「Dell Technologies World 2019」で発表したものだ。今回はこの話を、背景も合わせて取り上げてみたい。日本法人の会見では、デルの最高技術責任者(CTO)である黒田晴彦氏らが説明に立った。
左から、デルCTOの黒田晴彦氏、EMCジャパン アドバンスドテクノロジーソリューションズ事業部 クラウドプラットフォームスペシャリストの吉田尚壮氏、同モダンデータセンター事業本部 プロダクトアーキテクト ディレクターの森山輝彦氏
Dell Technologies Cloudと聞くと、「Dellもいよいよクラウドサービスを本格的にやり始めたのか」と受け取ってしまいそうだが、これは同社のグループ会社であるVMwareやDell EMCなどの技術をベースとして提供されるハイブリッドクラウドソリューションの名称である。
その内容は後ほど紹介するとして、その背景として、Dellがクラウドサービスをやっていないことについて説明する。
現在、企業向け事業を展開している大手ITベンダーの多くは、クラウド向けの技術や製品を提供するとともに、自らクラウドサービスも展開している。だが、Dellは統合前のEMCも合わせて、これまで自らクラウドサービスを本格的に手掛けていない。
厳密にいえば、かつてのEMCグループからDell Technologiesの下で独立企業として事業運営を行っているVMwareやVirtustreamは、特定領域に向けたクラウドサービスを提供している。だが、DellとしてはAmazon Web Services(AWS)やMicrosoftなどと競合するようなクラウドサービスを手掛ける戦略はとらず、むしろ、そうしたサービスプロバイダーやプライベートクラウドを構築するユーザー企業に対して、技術や製品を幅広く提供することに注力している。
つまり、Dellは自らクラウドサービスを手掛けず、クラウド向けの技術や製品を提供することに徹する戦略をとっているのである。これは、ユーザー企業のプライベートクラウド構築ニーズに対応し、AWSやMicrosoftなどのクラウドサービスと連携を図ったハイブリッドクラウド市場で、確固たるシェアを獲得しようという狙いがあるものと見て取れる。
こうした背景を踏まえた上で、Dellが今回発表した新たなクラウド事業戦略を見ていく。
関連記事
- 衝撃のEMC買収から3年 Dell Technologiesが遂げた“意外な成長”の理由
- 「Weekly Memo」記事一覧
- 衝撃のEMC買収から3年 Dell Technologiesが遂げた“意外な成長”の理由
2016年、DellによるEMCの買収劇は、市場に大きな衝撃を与えた。それから3年、度重なる買収劇で生まれたDell Technologiesはどう生き残ったのか? 長年取材を続けるジャーナリストが、その戦略展開を分析した。 - 「PC大手のデル」は昔の話――「デジタル変革支援企業」としての強みは?
プロダクトからサービスへの移行が時代の流れとなっている中、今や10兆円企業となったDellはそれに逆らってプロダクトにこだわっているように見える。その真意やいかに――。 - デルとEMCジャパン、新たなクラウドインフラストラクチャとPCのライフサイクル管理サービスを発表
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.