リクルート流RPA大作戦 「ROIを考えると導入はムリ」な業務にどう導入した?(1/3 ページ)
リクルートグループでRPA導入を進めるリクルートコミュニケーションズ。グループ全体で効率よくRPAを開発するコツとは。
多くの企業でソフトウェアロボットを使ってPC上の業務を自動化する「RPA」(Robotic Process Automation)の導入が進んでいる。導入理由は働き方改革や業務効率化などさまざまだ。しかしRPA導入したものの、「メンテナンスが面倒」「業務フローが変わり、使われなくなってしまった」などの課題に直面している企業も少なくない。その課題に向き合いながらリクルートグループにおいて、RPAの活用、推進を行うのがリクルートコミュニケーションズだ。
リクルートグループでRPAの導入が始まったのは2015年。当時からグループ全体として、イノベーション創出に充てるリソースを最大化する目的で働き方改革が進んでいた。しかし、生産性向上への具体的な取り組みは、グループ各社の判断で個別に実施されるケースもあったという。
「業務単位が小さい」「業務変化のスピードが速い」「業務ナレッジの個別性が高い」といった業務特性がある領域では、システム開発のROI(投資対効果)が低く算出されるため、IT化による業務の最適化が見送られていた実情があった。事業拡大に合わせてオペレーション業務が増大する中でもこの傾向は変わらなかった。
「2015年当時、私はリクルートグループにおける、メールマガジンの配信などの運用業務を担当する部署でマネジャーを務めていた。その中で、メディアが配信するメールマガジンの運用担当者が業務過多で疲弊する状況を目の当たりにした。この状況をなんとかして改善しなければ、と考えたのがRPAを導入するきっかけだった」と語るのは、RPA導入プロジェクトの旗振り役を担った、リクルートコミュニケーションズの小路 聡氏(サービスサイエンス事業局 プロダクトイノベーション推進1部 プロセスオートメーション推進グループ マネジャー)だ。
リクルートグループは、さまざまなメディアで多数のメールマガジンを配信する。定期的に配信するものだけでなく、「臨時便」や「特別便」と呼ぶスポットで配信するメールもあり、当時は手動で運用していたという。加えてメディアごとに異なる配信システムを使っていたこともあり、個別に対応する必要があった。
このように担当スタッフの業務負荷が増大していった結果、ダブルチェックなどの工数をかけてメールマガジンの確認作業を行っていたものの、リンク先のURLが違うといったミスを起こしかねない状況だった。メールマガジンの品質を守るのに精いっぱいだったのだ。
「スタッフの業務工数を削減しながら、ミスなく安定的にメールマガジンを配信するにはどうしたらよいのか、さまざまなアプローチを検討した。しかしその中で、運用業務をアウトソーシングする選択肢はなかった。これでは、アウトソース先のスタッフが同じように疲弊するからだ。そこで、人手に頼ることなく、ロボットで業務を自動化できるRPAに着目し、課題解決へのベストプラクティスだと判断した」(小路氏)
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