ハイブリッド、マルチクラウド化に本腰を入れ始めたGoogle Cloudの思惑:Weekly Memo(1/2 ページ)
ハイブリッド、マルチクラウド化へのニーズが高まる企業のIT利用に対し、これまでクラウドサービスしかなかったGoogleがその対応に本腰を入れ始めた。果たして同社の思惑とは――。
Google CloudとAnthosは“同格”のプラットフォーム
「Google Cloud Platform(Google Cloud)はお客さまに、全てクラウドに合わせてくださいというだけではなく、私たちからお客さまに寄り添っていくことも大事にしていきたい」
Google Cloud 日本代表の阿部伸一氏は、同社が2019年7月31日〜8月1日に都内ホテルで開催した顧客およびパートナー企業向けの年次イベント「Google Cloud Next '19 in Tokyo」の基調講演でこう切り出した。
当たり前の話のように聞こえるが、筆者はこの発言が同社の戦略転換を示していると感じた。どういうことか。同社がこれまで展開してきたパブリッククラウドサービスは、標準サービスであることから、顧客はその仕様に合わせるのが原則だった。しかし、それだけでは、ここにきてニーズが高まってきたハイブリッド、マルチクラウド化に対応できない。
そこで、同社もその対応に本腰を入れ始めた。米国で4月に発表した「Anthos」(アンソス)が、そのプラットフォームである。今回はこの新たなプラットフォームにおけるGoogle Cloudの思惑を探ってみたい。
阿部氏の後、基調講演に立ったGoogle Cloud テクニカルインフラストラクチャ部門 シニアバイスプレジデントのウルス・ヘルツル氏は、Anthosについて次のように説明した。
「Anthosはハイブリッドおよびマルチクラウド環境をスピーディーかつハイユーザビリティに統合管理できるようにしたプラットフォーム。オンプレミスやどんなクラウドでも、一度書いたコードを変更することなくセキュアにどこにでもデプロイできる。しかもオープンスタンダードに準拠しているので、特定のベンダーにロックインされることのないIT環境を実現できる」(ヘルツル氏)
同氏は、Anthosを活用するハードウェアの戦略的パートナーとして、Intel、Cisco Systems、Dell Technologies、Hewlett Packard Enterprise、Lenovoの名を挙げるとともに、テクノロジーパートナー、サービスパートナーとしても多くの企業が名を連ねていることを紹介し、次のように述べた。
「Anthosを手に入れれば、単にハイブリッド、マルチクラウドのプラットフォームを手に入れられるだけでなく、パートナー企業が提供するテクノロジーやサービスも手に入れられる」(ヘルツル氏)
そういう言い方もあるな、と感心しながら聞いていたが、それよりも目を見張ったのは、この発言の際にスクリーンに表示された図1である。Google CloudとAnthosの商品ロゴを並べたものだが、筆者はこれを見てハッとした。それは、この2つのプラットフォームは個別のもので“同格”だからだ。
筆者と同様に、Anthosは商品としてのGoogle Cloudのサービスの1つと捉えていた読者も少なからずおられるのではないか。この位置付けこそが、同社にとってAnthosがいかに同社の戦略を反映した商品かを物語っている。
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