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ナナメ読みしている資料に数百万円―ーその業務コスト、分かっていますか?RPA化のその前に、今日からはじめる業務可視化(2/2 ページ)

あなたが普段ナナメ読みしている週次レポートや経営報告資料の作成には、実に数百万円のコストがかかっているかもしれません。しかし、今の業務フローを可視化して整理する時間も手段もないからと、改善に踏み切れないケースが多いのも事実。一方、某企業はある方法を実践し、業務プロセスを変えただけで5000時間の業務時間を削減しました。その方法とは。

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“手段として”の可視化ツール

 可視化ツールとは、業務プロセスの一つ一つを記号(絵)にまとめて、各署でまちまちに処理していた業務プロセスを共通言語化し、改善ポイントを浮き彫りにする業務改善ツールです。

 思想としては、業務の中で情報をインプットするドキュメントに注目し、上記した改善ポイントを実施できるかどうかを考えます。例えば、議事録の作成という業務であれば、下記の順番で解決できないか考えていきます。

  1. 議事録というドキュメントの取得はやめられないか?
  2. その工数を削減できないか?
  3. 他の方法に置き換えられないか?
  4. 役割分担を替えられないか?
  5. システム化(DX)できないか?

 以下で当社が提供する「RoboRoid-HIT.s」を例に、可視化ツールで具体的にできることを解説します。

 まず現状の業務(As Is)について、「何のドキュメントに対して」「どのような業務を行っているのか」、その手順を幾つかの記号を用いてチャート化します(図1)。作業手順ごとに作業量を記録することで、1件当たりの処理時間と年間作業量も算出されます。これによって現在の業務が可視化され、どの部分を変えるべきか「改善ポイント」を一目で確認できるようになります(図2)。


図1 業務を可視化

図2 改善点の発見

 その後、作成したAs Isのチャートを基に、改善後の業務手順(To Be)をフローチャートとして図式化します。なお、To Beのチャートを作図する際には、「従来の作業を廃止する」「システム化する」「RPA化する」など、具体的にどのような方法を用いて業務を改善するかを考え、改善策を織り込んだ作業を想定します(図3)。


図3 改善方法の検討

 To Beチャートが完成すると、改善提案書を出力できるようになります。提案書では、業務プロセスを改善することで、どれくらいの時間を削減できるかといった情報も確認できます(図4)。

 ある企業は、このツールを使ってプロセスを改善し、RPAの導入やシステム化なしに年間で4753時間の業務時間削減を期待できることが分かりました。


図4 改善の実行

斜め読み資料のコストは数百万!?

 世の中には、業務可視化をうたうツールが幾つもありますが、「自らが楽しんで改善したくなるような改善ポイントが、どんどん浮かび上がってくるツールであるか否か」がツール選定において重要な軸になります。これを前提に、さまざまな可視化ツールを比較すると、「現状が見えるだけ」なのか「改善点を洗い出せるのか」といった実力が明確に見えてくるでしょう。

 企業においては、経営者が掲げたビジョンをマネジャーが体系的に分解して、担当者に役割を示し、各業務を通してビジョンが実現されるように図らなければなりません。その際には、同一の目線、目標、活動、成果の共有が必要です。

 しかし、「人」がこの情報共有の流れを悪くする原因を作ることが往々にしてあります。「習慣」や「制約条件」を言い訳に改善力不足であることを覆い被せたり、面倒くさいという「感情」が人の改善意欲を低下させたりといったことは、どの企業でも日常茶飯事に起こっていることでしょう。

 この情報共有の流れを整理し、同一の目線、目標、活動、成果がきちんと共有されるようにすることが業務可視化の真の役割だといえます。

 業務を可視化してプロセスを改善する作業を面倒だと思う方もいるでしょうが、例えば他愛のない週次レポートや経営報告資料に値札が付いているとしたら考えも変わるのではないでしょうか。業務の可視化を通じてドキュメント作成に掛かる金額も丸裸になります。あなたがもし斜め読みして受け流している程度の報告書資料の作成に、実は300万円ものコストが掛けられていると知ったら、間違いなくあなたはその資料作成を止める指示をするはずです。少なくとも工数の削減は要求するでしょう! そのモチベーションが沸き起こってくるのが可視化の醍醐味(だいごみ)なのかもしれませんね。

(参考)第1回:RPA失敗の構図――あなたの会社にも潜む引き継ぎという名の魔物

(参考)第2回:企業を蝕む「引き継ぎの魔物」、退治する4つの心得を伝授

(参考)「もったいない星人」の暗躍で会社が病む 迫りくる2025年の崖

企業紹介:キューアンドエーワークス

RPA(Robotic Process Automation)導入支援事業ならびに、人材派遣・技術者派遣、BPO・アウトソーシング、さらにRPAの諸スキルを持ちえたヒューマンリソースとAI・ロボットを組み合わせたデータインテリジェンスコンサルティングなど、企業ニーズに合わせた幅広いサービスを展開する。2015年4月に第1期「優良派遣事業者」に認定される。

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