SAPジャパンが示すDX支援「エコシステム」型協創は定着するか――SAPジャパン福田譲社長に2020年の展望を聞く:Weekly Memo(2/2 ページ)
今やIT業界のご意見番的存在でもあるSAPジャパンの福田譲社長に、「2019年の印象と2020年の展望」をテーマに話を聞いた。すると、DXの極意は「エコシステム」にあるとのこと。果たして、どういうことか。
2020年のキーワードは「エコシステム」
では、「2020年の展望」についてはどうか。福田氏は2020年のキーワードとして「エコシステム」を挙げた。
「2019年で着実に利用されるようになってきたS/4HANAのようなERPのDXにおいても、2020年はパートナー企業との連携とともに、ユーザー会とのさまざまな“協創”がますます重要になってくると考えている。JSUGでは現在、業種・業務や課題テーマごとに40以上の部会が活動しているが、今後もさらにS/4HANAのエコシステムとして発展し、進化していくだろう」(福田氏)
また、SAPジャパンでは2018年来、図2に示すようなデジタルエコシステムも推進している。このデジタルエコシステムは、ERPを含めて企業のDXによるイノベーションの創出に向けて幅広く連携していこうというものである。
日本独自の取り組みとしてスタートしたのは、2018年3月に発表された「Business Innovators Network」と称するコミュニティーである。その他、地方自治体や産学連携、大手企業、スタートアップ企業などと連携した多彩なプロジェクトを推進する。
最近では、2019年8月に新たな施設が2つ加わった。DX事業に向けて顧客やパートナー企業との協創によってイノベーションを創出するための「SAP Leonardo Experience Center Tokyo」と、グローバルな研究開発組織である「SAP Labs」だ。いずれも東京・大手町に開設した。
福田氏は2020年のキーワードとしてエコシステムを挙げた理由について、「今後、企業におけるDXのアプローチはエコシステム型になっていく。そこで使われる手法は、伝統的な要件定義やウオーターフォール型の開発ではなく、デザイン思考を取り入れながら俊敏にプロトタイプを作成するアジャイル型の開発だ。これまでとは真逆の手法が求められる。エコシステムはそれを象徴する言葉だ」と説明した。「DXの極意はまさにエコシステムにあり」ということだ。
さらに、こうも述べた。
「日本企業にはこれまでエコシステムを作って協創するという発想があまりなかった。例えばユーザーの利便性を考えると相互接続を実現した方が良いにもかかわらず機器の規格共通化ですらなかなか足並みが揃わなかった。なぜか。日本企業は自分たちの技術に確固たる自信を持ち、全部自分たちで“垂直統合”しようとしがちだが、残念ながら世の中は“水平分業”に向かっている。そこに本当に気付いて方向転換しないと、企業は、DX時代においてどんどん後れを取っていくだろう」
まさしく、ご意見番ならではの警鐘である。今回の福田氏の話に絡めて、筆者も一言述べておくと、先に紹介したSAPジャパンのデジタルエコシステムは、これからデジタルビジネスを推進するどの企業にとっても大なり小なり構築していく必要がある。中小企業であれば、それこそSAPジャパンのようなエコシステムに積極的に参加する手もあるだろう。その意味で、SAPジャパンのデジタルエコシステムは、デジタルビジネスの“仲間作り”に必要な要素を教えてくれている。DX時代のさまざまな変化をしっかりと捉えたいところだ。
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