2020年は何を信じよう? サイバーセキュリティのゆく年くる年:半径300メートルのIT(2/2 ページ)
2019年のサイバーセキュリティを振り返ると、「これまで信じていたものの崩壊」が印象に残っています。来年は、一体何を信じればいいのでしょうか。セキュリティベンダー各社の予想から、2020年の「信用と対策」について考えてみました。
最後に「2019年に買ったベストガジェット」と言いたいところですが……
そして、2019年もたくさんのガジェットを購入しました。そこで最後に「買って良かったガジェットはこれ!」とご紹介したいところですが……そういったことを書きづらくなる問題が発生しました。「ステマ」騒動です。
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ステルスマーケティングとは、金銭やサービスの授受を隠して、宣伝と気付かれないように宣伝行為をすること。映画「アナと雪の女王2」にて、ウォルト・ディズニー・ジャパンの宣伝行為が不適切に行われた件で、大きな問題となりました。
この件は実際のステマそのものに加え、インターネット上で発信される情報が疑心暗鬼の対象に――つまり、誰かの感想が「これはステマでは?」という疑念を持たれやすくなってしまったことが、より大きな問題であると思っています。
個人で購入したものを誰に言われることもなく「これはオススメ!」と書いて「ステマだ」と言われてしまっては、本当に良いと思った情報を発信しにくくなってしまいます。これは、冒頭にて指摘した「ディープフェイク」も同様の危うさを持っているかもしれません。「それ、本当に信じていいんですか?」という疑念です。
それでもあえて述べれば、筆者の2019年のベストバイは「AirPods Pro」と「iPad」です。2020年はiPadで仕事をしようと思っています! ……ステマではありません、念のため。
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何を信じればいいのか、どうすれば信じてもらえるのか
2019年はその他にも、信頼をコアコンピタンスとする企業が、その信頼を自ら損なうような事件が多数発生しました。市民を守るべき警察や警備会社による犯罪、通信を守るべき事業者や就職活動を支援する団体による情報の不適切運用、個人情報を保護するデータ保持者によるストレージの不正転売などなど。振り返ると、暗い気持ちになる事件も多かったように思います。
信頼は時間をかけ、少しずつ積み重ねることでしか醸成できません。一方で、失うのは一瞬です。また、どこか一つの企業が信頼を損なえば、水に投げ入れられた毒が広がるように、業界や社会全体が疑心暗鬼に包まれます。これも、2019年に私たちが直面した、大きな脅威といえるでしょう
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セキュリティベンダー各社が予測した今後の脅威は、どれもが「何か製品を買ったら守れる」ものでもありません。2019年は、「これさえ守れば大丈夫」という前提が崩れてしまった年といえます。2020年はさまざまな疑念に対し、皆で考えて少しずつ歩み寄る時代にしていかなくてはなりません。
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著者紹介:宮田健(みやた・たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門 「木曜日のフルット」と学ぼう!〈漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ〉』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる。
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