なぜ、最高データ責任者が企業にとって必要か――PwCコンサルティングのレポートから読み解く:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業のDXにおいてデータの有効活用がますます重視される中、「最高データ責任者(CDO)を置くべきだ」との声が高まってきている。そう訴えるPwCコンサルティングのレポートを取り上げながら、CDOの必要性について考察してみたい。
CEOはCDOの任命にDXへのメッセージを込めよ
3つ目は、「データアナリティクスのインフラ整備とデータ分析に基づく意思決定文化の醸成」だ。社内のデータアナリティクスの能力を高める取り組みを主導し、データを収集、分析して生産性を向上させるといった意思決定を支援することだ。すなわち、経験や勘を基にした意思決定から、データ分析により抽出されたインサイトに基づいた意思決定に関わるデータ分析基盤の構築を支援することだ。
4つ目は、「データ提供の統制」だ。データまたはデータを分析、加工したインサイトをデータプライバシーおよびセキュリティを維持しながら提供、または販売するプロセスを統制することである。
5つ目は、「社内外のデータ解析および共有から新規事業機会の発掘」だ。社内のデータを組み合わせて全社的視点から分析することで、事業部門が単独では見つけられない新たな業際的事業機会を発見する。また、自社が収集したデータを企業の枠を超えて提携先企業と共有し、分析することでデータに付加価値を創出し、共同で新たな事業機会を発見する。
6つ目は、「新規事業機会の検証」だ。発見した新規事業機会を検証するために、事業部門または提携先と連携して新たな商品またはサービスのアイデアを市場で検証する。
以上、CDOに期待される6つの役割を見てきたが、レポートでは図2に示したように、CDOは資産としてのデータの防衛という“守り”を担う一方で、データから事業に役立つインサイトを抽出し、新規事業開発など付加価値創造を行うという“攻め”も担うことになるとしている。
こうした役割を前提とすると、CDOは経営層および事業部門長に対して対等の立場で新たな商品・サービス開発の提案を討議するだけの権限を有するべきである。現状ではCDOを、事業部門長や情報システムの開発、運用面を担うCIOにレポートする立場に置く企業多数存在するとみられるが、本質的には図3にあるように、CDOは最高経営責任者(CEO)または最高執行責任者(COO)に直接レポートするような関係が適切ではないかとしている。
最後に、筆者もCDOの必要性について一言申し上げておきたい。図1においてCIOやCISOとの関係性、図3において組織での位置付けの話があったが、いずれにしてもCDOをどのような形で設け、誰を任命するかは、CEOの役目だ。CEOは、その判断に「自社のデータ利活用をどのように考えているのか」「DXをどれだけ重視しているのか」といった確固たるメッセージを込めるべきである。その意味においても、CDOの存在は必要だと考える。
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