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ただのビデオ会議システムにあらず、Zoom日本法人トップが語る「Zoomの正体」Weekly Memo(2/2 ページ)

コロナ禍による在宅勤務の急増で一気に普及したビデオ会議システム「Zoom」。ただ、運営会社の日本法人トップによると、その機能はビデオ会議にとどまらないようだ。果たして、その正体とは――。

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目指すは「シンプルに使えるサービスプラットフォーム」

 佐賀氏の講演から筆者が注目した2つ目のポイントは「Zoomとは何か」である。同氏は「ビジネスコミュニケーションテクノロジー」という表現を使い、その進化について次のように説明した。

 「Zoomはビデオ会議ともWeb会議ともいわれるが、正しくはどちらでもある。ビジネスコミュニケーションテクノロジーの進化でいうと、まず内線で会話ができるオフィス電話からスタートし、次いで20年以上前に会議室と会議室をリモートでつなぐビデオ会議が登場し、その後、オンラインで会議ができるWeb会議が使われるようになった。Zoomは、実はこれら3つのテクノロジーに対応している」

 とはいえ、内線電話機能については、欧米では展開しているものの日本ではまだ利用できず、「2020年内に日本でも提供する予定」(佐賀氏)とのことだ。ビデオ会議機能については、基本的にハードウェアベンダーと連携して事業を展開している。それでもZoomが「ビデオ会議」と呼ばれることが多いのは、ビデオ会議がWeb会議も含んでいるとの解釈が広がっているからだろう。

 この2つ目のポイントで最も注目すべきなのは、図3に示すように「Zoomは(上記の)3つのテクノロジーや連携するハードウェアベンダーとともに、(図の右側にある)アプリケーションマーケットプレースも活用できる『サービスプラットフォーム』である」(佐賀氏)ということだ。

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図3 サービスプラットフォームとしてのZoom(出典:ZVC 佐賀氏の講演より)

 佐賀氏の発言こそ、Zoomの「正体」を表している。ただのビデオ会議システムではない。本稿で「図2の連携パートナーが関係する」と述べたのもこのためだ。

 佐賀氏はさらに、「Zoomサービスプラットフォームは、単にさまざまなサービスを連携できるだけではない。複数のテクノロジーやサービスが入り交じって複雑になりがちな使い勝手をいかにシンプルにするか。そこにZoomの存在意義を感じてもらえるようにしたい」と強調した。

 3つ目のポイントは、「ZVCがZoomのサービス展開にマルチクラウド戦略を採っている」ことである。佐賀氏によると、ZoomのITインフラは世界17カ所のデータセンターに設置され、パブリッククラウドの拡張性を活用して負荷が特定箇所に集中しないようにデザインされているという。

 そうしたパブリッククラウドの一つとして、ZVCがOracle Cloudを採用したのは、「パフォーマンスや拡張性、信頼性とともに、とくにパブリッククラウドのセキュリティとして卓越していることが選定の決め手になった」(佐賀氏)という。

 セキュリティについては、Zoomが2020年3月頃から脆弱(ぜいじゃく)性についてさまざま指摘を受けて対応に追われてきた背景が、同氏のこのコメントからもうかがえる。

 さらに、佐賀氏は「Zoomの需要急増に対してもOracle Cloudに助けてもらえた。感謝している」とも話した。日本オラクルのセミナーなのでリップサービスはあろうが、マルチクラウド戦略を採っているZVCとしては、少し踏み込んだ発言のようにも感じた。

 ZVCには成り立ちに興味深いエピソードやストーリーがある。急成長を遂げる中、同社はシンプルに使えるサービスプラットフォームを目指し、マルチクラウド採用によって先進のクラウドサービスベンダーとして、新たな未来を切り開いていく――。そんなイメージが、佐賀氏の話を聞いた後、筆者の頭の中で広がった。

 競争の激しいIT分野では、急成長したベンダーであっても輝きを放ち続けるのはなかなか難しい。どこにも買収されず、専業クラウドサービスベンダーとしてSalesforce.comのような存在になっていけるか。注目していきたい。

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