5000社との取引で食を支えるニチレイロジはどうデータを集め、業務を変えているか
DX推進を目指す際、避けては通れないのが今までにないデータの収集や最新技術の活用だ。約5000社の顧客を持つニチレイロジグループはコールドチェーンのDXを進めるに当たり、680万枚にも上る紙のプロセスをデジタル化し、さらに自動走行ロボットやAIを活用した業務そのものの改革を推進する。本稿はその詳細をレポートする。
データ分析ソリューションベンダーであるSAS Institute Japan(以下、SAS)は、主催するオンラインイベント「SAS FORUM JAPAN 2020」において、金融、ライフサイエンス、通信、物流などの業界ごとのデータ分析の最新事例を配信している(会期:2020年11月25日〜12月25日)。本稿はその中でも物流の業務革新を進めるニチレイロジグループの、本社業務革新推進部 部長代理 勝亦 充氏による講演「サプライチェーン高度化を支える『物流DX』 〜作業のデジタル化、AI活用による画像認識で人手不足を解決〜」を取り上げる。
冷凍食品で知られるニチレイグループで、食品物流、低温物流(コールドチェーン)事業を担うのがニチレイロジグループだ。年間売上高は約2000億円で、ニチレイグループにおける売上高の35%を占める。
意外にも取引先は、レストラン、ファストフード、スーパー、コンビニ、商社、メーカーなど、グループ以外の企業との取引が全体の92%を占める(取引企業数は約5000社)。物流サービスとしては、保管事業、海外事業、エンジニアリング事業、ネットワーク事業の4つを運営し、コールドチェーンの川上から川下までを幅広くカバーする。
680万枚の紙をどうデジタルの文脈に乗せるか
ニチレイグループは2016年に業務革新推進部を設立し、現在全社を挙げて業務革新に取り組んでいる。傘下のニチレイロジグループも、まずは業務のデジタル化を進めながら、同時にAI、ロボットなどの最新技術を生かした自動化や効率化といった業務改革を推進し、同時にデータ蓄積を進める状況にある。
勝亦氏によると、業務革新を進める背景には2つの課題があったという。
1つは、労働力不足への対応だ。労働人口が先細りする中で「持続可能な物流」を実現するには、既存業務を熟練者でなくてもできる仕事、ストレスフリーな仕事に変革し、効率的な運営に変える必要があった。
もう1つは、デジタル化の遅れだ。同社は物流事業者としてWMS(物流管理システム)を運用しているが、WMSのサブシステムである保管台帳システム、輸配送システム、EDIシステム、請求システムなどについては紙を使った手作業が発生していたという。
「5年前に80カ所の物流センターで出力される紙の量を計測したところ、A4用紙で680万枚、積み上げれば約600メートルもの高さになるほどです。まるで紙に仕事をさせられているような、極めて重要な問題でした。そこで、物流作業と事務のフルデジタル化を目指すことにしました」(勝亦氏)
同社はDX推進に当たり、業務の「ペーパーレス化」「誰でも出来る化」「無人・省人化」「待機問題」「事務効率化」「先端技術追求」「どこでも出来る化」の7つの施策それぞれで新しい物流業務の在り方を模索する状況にある。
7つのDX施策には、それぞれ中心的な取り組みがある。ペーパーレス化は「庫内作業のデジタル化」、誰でもできる化は「AI自動配車」、無人・省人化は「自動運転フォークリフト、ロボティクス」、待機問題は「トラック予約システム」、事務効率化は「RPA、AI-OCR」、先端技術追求は「画像認識AI、オペレーション変革」、どこでもできる化は「システムBCP、冷凍機故障予知診断、サードプレースオフィス」だ。
講演ではこのうち「庫内作業のデジタル化」「無人・省人化」「先端技術追求」の3分野の取り組みを詳しく解説した。以降でそれぞれの具体的な内容と成果を見ていく。
検品作業を変える庫内作業のデジタル化
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