全社DXが、CDOやCDXOを置いただけでは実現できない理由:Weekly Memo(1/2 ページ)
企業におけるDX推進をCDOやCDXOなどのリーダーだけに頼るのではなく、組織的に取り組むことを支援する新サービスをKPMGコンサルティングが始めた。明らかにされた、DXの見落とされがちな課題とは。
企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進をリードする役目としてCDO(最高デジタル責任者)やCDXO(最高DX責任者)が注目されているが、そうしたリーダーに依存するのではなく、専門組織を設けて全社でDX推進に取り組む態勢を作るべきだ。――KPMGコンサルティングが2021年3月23日、こんな考え方に基づいた新サービスの提供を始めると発表した。
サービスの名称は「企業全体のDXをデザイン・推進する専門組織『DXMO(Digital Transformation Management Office)』の構築・運営支援サービス」で、CDOやCDXOだけに頼ることなく、DXMOが全社のDXを組織的に推進することを目的としている。企業がDXの推進に当たって取れる手段の1つになると見たので、今回はこの考え方ととともに新サービスの内容を探ってみたい。
KPMGコンサルティングが掲げる「DXMO」の役割とは
KPMGコンサルティングはDXの現状について「世界中の企業がDXに取り組み、デジタルディスラプション(デジタルによる既存産業の破壊)が起こる中、日本企業も抜本的なデジタル改革を進めようとしている」と説明する。
その上で、同社は「部分工程のデジタル化や特定部門主導のウオーターフォール型によるシステム導入など、従来型のIT化プロセスから脱却できず、DXが個別最適にとどまっている企業が数多く存在する」と、その課題を説明する。
同社は、ビジネスプロセス全体のデザインやアジャイル的アプローチを基礎としたDX推進を主導する専門組織としてDXMOを立ち上げてDX戦略の策定を支援する新サービスの開始を決めた。
DXMOは全社のDX推進を加速させる戦略的組織だ。CDOやCDXO、CTO(最高技術責任者)、CIO(最高情報責任者)が掲げたDXのビジョンや目標を実現するために、大きく分けて「DXビジョンの具体化」「DXナレッジ提供とプロセス標準化」「DX人材育成とコミュニケーション活性化の支援」の3つの機能を有する
DXは、全社の全業務に影響する大規模な変革であり、従来通りのIT化プロセスでは実現が難しい。上記の機能により、DXMOは複雑に絡み合う組織をけん引しつつ、DXを着実に推進できるという(図1)。
図2は、企業がDX推進時に陥りやすい状況と改善の方向性を示したものだ。左側に「DX推進で陥りやすい事象」、中央にはそれに対して「想定される課題」、右側には「改善の方向性」として、新サービスのポイントが記されている。
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